死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 木のトンネルになっている遊歩道を進んでいくと、ようこそ! と書かれた看板が見えてきた。そこには施設の名前も書かれていて――

「あ! フラワーパーク」

 フェルがデートの場所として選んでくれた所が何処か、ようやく分かった。

「ここ、敷地も広くて、一年中花が綺麗みたいなんだ。それにお金が必要ないから、いいなと思って」

 さっき私にだけお金を出させるのはー、みたいなことを言っていたから、確かにここならフェルの条件にぴったり当っている。

「花ちゃん、ここに来たことはある?」

「ううん。ないよ」

 答えながら、ふるふると首を振った。

 ここのフラワーパークは、地元でも人気の高い場所だった。県内に住む人なら絶対知っている場所で、デートスポットにも、お子様連れの家族でも楽しめる所。
 フェルが言っていたように、一年中四季折々の花が植えられていて、写真を撮る人や、今流行りのぬい活に来る人も多い。

 そんな場所ではあるけど、私は一度も訪れたことがなかった。
 親に連れて来てもらわなかった。あるいは地元だからこそ、足が遠退いていた、か。

 どちらとは敢えて考えなかった。
 素直に今、初めて来た場所にわくわくしていたから。

 そんな気持ちが、フェルには伝わっていたのかも知れない。嬉しそうに微笑んで、やったねと言った。

「花ちゃんの初めて、もらっちゃった」

「……その言い方は、何か語弊なくない?」

 何だか妙に恥ずかしくなって言うと、にやと意地悪な笑いが向けられる。

「花ちゃんは一体何を考えたのかな~? 僕は純粋に、花ちゃんが初めて来た場所を喜んだだけなんだけどなぁ」

「な! なななな何もやましいこととか、考えてないもん! それに? 私、そっちのこと、よく知らないし?」

 焦って早口で、とんでもないことを口走ってしまう。それは逆に図星であることを証明しているだけだと言うのに。
 取り繕う私に、あははとフェルが笑った。

「そう言うことにしといてあげる」

「そ、そう言うことじゃなくて、そう言うことなんです!」

「そうだね~」

 なんて簡単にあしらわれている内に、入り口までやって来た。

「じゃあ、今日はいっぱい楽しもうね」

 にこと笑うフェルの手は、いつまでも私の手を繋いでいる。
 開かれた入場門を越えると、色とりどりのチューリップの植え込みが出迎えてくれた。