死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 土曜日で周囲の人通りが少なかったので、私の存在が空に浮かぶ謎の人間にならずに済んだ。
 とは言え飛行機やヘリコプターと出会ってしまえば、未確認飛行物体、未確認生物になってしまう。だから長いマントで私を覆い、隠してくれた。

 ある程度の高さまでやって来ると、上昇が止まる。それからは何処かに向かって、遊覧移動となった。

 上昇していく勢いに、怖さに体を固まらせていた私は、ようやくここで力が抜ける。しかしお姫様抱っこの状況は続いたままであり、徐々に恥ずかしさが込み上げてきた。

「今日、いい天気でよかったね」

 私がマントの下で恥ずかしがっていることに、気付いているのかいないのか。会話が始まる。

「そ、そうだね」

「うん。せっかくのデートだし。それに雨が降ると困る場所だから、よかったよ」

 それを聞いて、屋内ではないんだと知る。

「えっと……、まだ場所は訊かない方がいい?」

「ふふ。お楽しみ、と言いたいところだけど、もうそろそろ見えてくるよ」

 楽しそうな笑い声が上からして、ひょこっとマントの中から顔を出す。

 住宅やビルなどが建つ郊外の景色から、山や木と言った緑が多い景色が遠くに広がっていた。

 ここら辺には何があったっけ?

 住んでいる県と言っても、全てを知っている訳じゃない。近くだからこそ行かない場所も多く、景色を見ても何処かピンとこない。

 私が答えを言わないから、知らない場所だと思ったんだろう。フェルは嬉しそうに、下りるよと言った。

 ゆっくりと地上に下りていって、優しく立たされる。足が地面に着いた場所は、まっすぐ奥に伸びる道の上だった。

 左右は木々に囲まれ、低い場所にはつつじが咲いている。それがずっと奥まで咲き、素敵なつつじ道が続いていた。

「花ちゃん。この先が目的の場所だよ」

 辺りの景色を見渡していると、フェルが顔を近付けてきて言った。声の距離の近さとハッと我に返ったことで、ビクッと肩が跳ねる。そんな私を見てくすくす笑うフェルは、もう一度ランチバッグを取った。

「行こう」

 フェルの右手が私の左手を取る。すっと、自然に、優しく手が繋がれるものだから、最初それに気付かなかった。

「へ?」

 気付いた時には手を引かれる。ドキドキする間もなく、引かれるままに歩き出した。