死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 場所は考えておくねと言われ、今日を迎えたので、一体何処に行くのか全く知らない。
 私の質問に対して、フェルがふふと笑う。

「やっぱりふたり一緒に楽しみたいからね。周りが気にならない所を選んだよ」

「もしかしてだけど、めちゃくちゃ大変だったよね……?」

 場所やデートコースとか知らないって言っていたし。
 人間の私でさえ知らないのに、死神であるフェルはもっと大変だったのでは?

 恐る恐る訊いてみれば、フェルは自分の口元に人差し指を当てた。

「それを訊くのは野暮ってやつだよ。それにお弁当を作ってってお願いしたし、僕がこれくらいするのは当然だよ。でも、そうだね。ひとつだけ言えるとしたら、デート場所を考えたり探す時間は、すごく楽しかったよ」

 大変だったであろうことをさらりと、何でもないことのように言って。本当の彼女に見せるような、優しい笑顔を向けられ、心臓がぎゅんと締め付けられる。

 フェルって本当に……。
 恋人みたいな扱いをしてくれるよなぁ……。

 それが例え偽りだと分かっていても。
 例え私の魂を狩る為の行為だと分かっていても。
 勘違いしそうになる。

 別に彼氏が欲しい訳じゃないけど、もしフェルが彼氏だったら? って思ってしまう。
 そうしたら学校でひとりじゃなくなるだろうし、楽しいだろうなとも思う。

 そうなったら……死にたいとも思わないのかな……?

 ぼんやりとそんなことを思いながら歩いていると、手を取られた。パッと足が止まり、フェルの方を振り向く。

「こっち来て」

 そう言って手を引かれ、連れて行かれるのは公民館。選挙の時や、何か催しがある時にだけ開かれる公民館の裏手に回る。住宅街の中にあると言っても開いていないので、人の気配は全くなかった。

「ここに何かあるの?」

「ここなら人目に付かないでしょ?」

「ん? うん」

 意図を汲み取れず、返事だけする。すると持っていたランチバッグが渡された。

「鞄、持ってて」

「う、うん」

 言われるがままに持つと、しっかり持っててねと言われる。

「僕が行こうとしている場所って、バスか電車で行けるみたいなんだけど。花ちゃんひとりお金を出させる訳にはいかないから、僕が連れて行くね」

「え? それって――」

 言い終わるより早く、ひょいと抱き上げられる。お姫様抱っこされ、え? と固まっている内に、フェルの足が地面から離れた。

「バレない高さまで一気に行くよ」

「わっ……!」

 言うな否や、びゅん! と空高く上がっていった。