死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 敷地内を出て、家から外の様子が見えなくなってから、荷物を持つよと言われた。こっちから手渡すのではなく、フェルから貰いにきてくれる。

「もしかして、この中にお弁当が入ってる?」

「……うん。そうだよ」

 まだドキドキが治まっていない私は、顔も見れずに答える。

「やった。お昼になるのが楽しみだなぁ。じゃあぐちゃぐちゃにならないよう、丁寧に持たなきゃね」

 本当に嬉しそうに笑って言ってくれるので、胸の高鳴りが延長されてしまう。

 作ってよかった。頑張ってよかったな、と言うふたつの気持ちが同時に沸き起こる。
 それでも喜ばれ慣れていない私は、はにかんだ笑顔を返すことしか出来なかった。


「それにしても、せっかくの花ちゃんとのデートなのに。いつも通りのマント、って言うのが残念だなー」

「え、でも、私、そう言うの全然気にしないよ」

「ふふ。花ちゃんならそう言ってくれると思ってた。でもありがとう」

「いや、そんな、お礼を言われる程では……。でもやっぱり死神は、その姿じゃなきゃダメなの?」

 素朴な質問を訊ねると、フェルはうーんと悩ましい声を出す。

「ダメ、って訳じゃないだろうけど。でもそもそもに、人間みたいに服を着替えるって言う習慣も、感覚もないからなぁ。フード付きのマントを羽織ったこの姿が、僕達のデフォルトだから」

「そっか」

 だから死神と言えば! と言うイメージが固定されているんだろうなと思った。
 もし服装がころころ変わっていれば、定着はしていなかったかも知れない。

 だけど。
 フェルだったら、何でも似合いそう。

 180はある高身長は、モデル並みに着こなすだろう。それこそかっこいい系もクール系も、何ならモード系だって。

 自分が思うかっこいい系の服を、フェルに着せた想像をしてみては、いつもが黒ずくめなので、見慣れないことに、ひとりでくすと笑ってしまった。

「なにひとりで笑ってるの? 僕にも共有してよ」

 拗ねたマネをして言ってくるので、苦笑しながら謝る。

「ごめん。でもフェルだったら、どんな服でも似合うだろうなぁと思って」

「ふふ。褒めてくれてありがとう。でもそれなら、おしゃれして来たらよかった」

 ――服は何処で調達してくるの?

 つい先日。カイとのやり取りもあって、そんな疑問が湧いてきたが、それは口にしないでおく。

 軽く会話をしたことで、いつの間にかドキドキが治まっていた私は、大事なことを訊ねた。

「今日は何処に行くの?」