死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「ご、ごめんね。待たせた?」

 玄関から飛び出てきて、慌てて訊ねる。

「花ちゃん、おはよう。全然待ってないよ」

 宙に浮いていたフェルが降りてきて、正面に立つ。そして私の姿をじーっと見始めた。

 ……何かおかしい?
 やっぱり似合ってなかった……?

 視線に耐え兼ねてあのと口を開こうとした時、フェルがにこと微笑んだ。

「ごめんね、ぶしつけに見ちゃって。いつもと雰囲気が違うから、つい見惚れちゃった」

「え、えっと……。大丈夫かな? 変、じゃない……?」

 どうしても幽霊だと言われたトラウマが拭えない。

 ワンピースだけじゃ乙女過ぎると思って、上にはグレーのパーカーを羽織ってきた。これなら幾分カジュアルにもなって、私的には大丈夫だと思ったけど、正解かどうかが本当に分からない。

 もし変だって言われたら、すぐ着替えてこよう――!

 目をぎゅっとつぶり、覚悟を決める。

「何にも変じゃないよ。今日の花ちゃん、とっても可愛い」


 ――――可愛い可愛い可愛い――――。

 ――――パァン!


 可愛いと言う言葉が頭の中でリフレインする中、心臓を銃で撃ち抜かれた感覚と音が聞こえた。

「うっ……!」

 心臓を押さえ、うっと屈む。普段言われ慣れていない言葉は、私にクリーンヒットを与えた。

 ……今日。
 私の心臓は持たないかも知れない。

 そんな予感。いや、確信に、今日一日無事に生きて帰れるだろうか? と思う。

 大袈裟な行動をする私を見て、フェルはくすと笑う。一歩、距離を詰めてきて、私の左手を取った。

「今日は僕のデートの為におしゃれしてくれて、ありがとう」

 嬉しいなと言って、手の甲に軽くキスが落とされた。唇の感触が更に自我を失わせ、声も出せずにその場に崩れ落ちる。

「ほんと、花ちゃんて反応が可愛いよね~」

 くすくすと笑う姿から、面白がられていると言うことは分かる。

 ……で、でも!
 だからって、いちいち反応しないようにするなんて、私には出来ないっ!

 もうすでに心臓が壊れるんじゃないか? と思うくらい、鼓動はばくばくと大きく速く打っている。

 取られたままの手を引かれ、優しく立たされる。

 フェルがちらりと家の方に視線を移すと、窓から訝しい表情をして、様子を伺う母親の姿があった。が、私がそれに気付くはずはない。

 家に向いた視線をこちらに戻すと、フェルはにこりと王子様スマイルを見せた。

「じゃあさっそく行こっか」

「ひゃ、ひゃい……」

 まだ足腰に力の入らない私は、連れられるまま歩き出す。
 身体中が暑くて。熱に浮かされる感じを覚えながら、空を見上げた。

 そこに、いつもいるカイの姿はなかった。