死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 準備、と言っても、普段学校に行く時と変わりはなかった。

 メイクはしないし、と言うかメイク道具を持っていない。
 髪の毛はセットしないし、と言うかアイロンもないし、今までアレンジをしたこともない。

 後は服装だけど――これまで遊びに行く=おばあちゃん家と言う概念しかなかったので、可愛い、おしゃれな服も持ち合わせていなかった。

 おばあちゃん家に行くだけにおしゃれは必要なかったから、あるのは普段着みたいなTシャツだけだった。

 これまで如何におしゃれに興味がなく、死にたいと願うだけの暗い人生だったかがよく分かる。
 こんなことなら1着くらい一張羅を持っておけばよかったと、たんすの中をひっくり返していると、ふとある服に目が止まった。

「この服……」

 出てきたのは、白いワンピース。汚れも全くない、新品同様の物だった。

 中学生の頃、おばあちゃんが誕生日にくれた服。いつも同じような格好をしている私に、1枚くらい可愛い服を持っているといいわよと言って、プレゼントしてくれた。

 袖の部分とスカートの裾がレースになっていて、くるりと回ればふわりと広がる。乙女っぽくて可愛くて、最初こそ喜んで着ていた。けれど蘭に何処ぞの幽霊にしか見えないと笑われてから、いつしか着なくなってしまった。

 これを着たら、きっと笑われる……。

 あの頃と私の容姿は何も変わっていない。
 目の見えない重い前髪に、長い黒髪。

 貞子。柳の下の幽霊。

 普通の人にフェルは見えないから、嘲笑されるのは私だけ。でも見えないだけで隣にフェルはいる訳だから、一緒にいていい気分にはならないだろうなと思う。

 ……やっぱりいつもの服で行こう。

 そう思ったけど、ベッドの上にあるのは、首元がヨレヨレになったTシャツの数々――。

「んーー! やっぱりワンピースで行こう」

 頭の中では今日は、特別な日だと認識していたのだろう。
 だから例えフェルが周りから見えなくても。フェルに恋をしている訳ではなくても、ちゃんとしていかなきゃと思った。


「コンコン」

 あせあせと腰の部分に付いている紐を結んでいると、窓を叩く音がする。振り返ると窓の向こう側に、やぁと手を挙げるフェルがいた。

「いい、今行くね!」

 窓越しにも聞こえるように大きな声で言って、ショルダーバッグを肩に掛け、部屋を出る。急いで階段を下り、用意が終えていたランチバッグを持って、家を出た。