死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ――――と、言うのが、昨日の流れだった。

 そうして私はデートと考えるだけで何も手が付けられず。
 デートと考えるだけで、ご飯の味が感じられず。
 デート。と考えるだけで目が冴えて、夜も寝れなかった。

 布団を被っていた私だったが、あまりに眠れずに起き上がる。スマホで時間を見ると、朝方の4時になったところだった。

「……もう起きよう」

 ベッドから下り、部屋を出る。顔を洗って歯を磨いてからリビングに向かうけど、人の気配は全くなかった。

 まだ暗い室内の電気を付けて、私がいつも使っているお弁当箱を用意する。フェルと私のふたり分と言っても、お弁当箱はこれしかない。なので2段のどちらにもおかずを詰めて、ご飯はおにぎりにして持って行くことにした。

 手を洗って、まずは米を炊く。その間に冷蔵庫から食材を出し、よしと小さな声で呟いてから、ピーマンを切り始めた。


「――出来たぁ」

 最後。目のごまを乗せて完成すると、思わず息が漏れた。

 達成感がハンパない……。

 お弁当作りに費やした時間は2時間。まだ薄暗かった空も、気付けば明るくなっている。
 フェルと会う前なのにすでにやり切った感があって、ここで今日の全ての体力を使ったと言っても過言ではなかった。

 ピーマンとにんじんのきんぴら。カニカマとチーズのちくわ巻き。とうもろこしとほうれん草のソテー。揚げない唐揚げと、タコさんにしたウィンナー。
 そして――フェルの要望であった、甘い卵焼きを入れて、おかずは完成した。

 我ながらに頑張ったと思う。時間があったとは言え鶏肉を仕込んで、唐揚げまで作った。

 学校に持って行くお弁当なら、こんな手の込んだことはしない。それなのにはりきってしまったのは、デートだったから――と言う思いは多少はあったかも知れない。けれど一番頭にあったことは、楽しんでもらいたいと言う思いだった。

 関君とのお昼ご飯。お弁当を見たフェルは、興味津々そうに目を輝かせていたから。

 だから作っている内に張り切ってしまい、タコさんの目と口も仕上げてしまった。
 おかげで彩りが良く、可愛らしいお弁当が出来上がったが、もうへろへろだった。

「後は割り箸を用意して~……」

 時計を見て、フェルは一体何時に来るのだろう? と思う。

 梅ひじきのふりかけを混ぜたおにぎりと、海苔を巻いたシンプルなおにぎりをランチバッグに入れて、急ぎ後片付けを始めた。

 洗い物をしていると、母親が起きてくる。リビングに私がいること、早起きしていることに驚いた様子だったが、お弁当を見て眉を寄せた。

「お弁当……?」

「あ、今日友達と遊ぶので……」

 死神、なんて言えないので、友達だとぼかしておく。
 するとますますに、母親の顔が訝しいものになる。

「あんたが? 友達、ねぇ」

 母親の言いたいことは分かった。これまでに私が、友達と遊びに行ってくるなんて言ったことがなかったから。

 疑わしい視線と、冷ややかな態度にいたたまれず、片付けを早めに終わらせる。

「じゃあ、用意して、行ってきます」

 ぺこりと頭を下げて、足早にリビングを出た。