死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「お弁当を作って欲しいんだ」

「………………お弁当?」

 想像していたお願いより断然ソフトなものに、強張っていた体から力が抜ける。きょとんとして聞き直せば、うんと返事があった。

「お弁当くらいなら……全然いいよ」

「本当に? やった。花ちゃんありがとう」

 にこっと、フェルが嬉しそうに笑う。

 関君とのお弁当に興味を持っていそうだったから、気になっていたのかな?
 なんて考えていると、そっと耳元に唇が寄せられた。

「もうひとつ、お願いしてもいい? 甘い卵焼きを入れてきて欲しいな」

 突然の甘々ボイスによる耳打ちに、体が飛び跳ねる。耳打ちされた耳を押さえながらフェルの方を見ると、愛おしそうな顔で見られていた。

「明日の朝、迎えに行くね。花ちゃんとのデート、楽しみにしてる」

 私の長い髪のひと束を梳きながら、抱き寄せられていた体が離れていく。最後まで甘やかされて、力が抜けた私は、その場に腰を砕けさせた。

 離れていったフェルは、カイの方に向かって歩き出す。
 すれ違い様、忠告と言う名の挑発を伝えた。

「明日、カイの代わりに見張っててあげるね。でも僕に殺して欲しいってお願いされた時は、遠慮しないから」

「――おいっ!」

 目的は断じて見張りなんかではない。
 隙あらばやろうとしているのが明らかで、カイが慌ててフェルの方に振り向くが、じゃあね~と満面の笑みを浮かべて、宙に浮く。

 そのまま手を振りながら何処かへと飛んでいくのを、呆然と見送った。