死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 関君のお弁当は私のと比べて、単純に2倍あった。私が小さな2段弁当に対し、関君は1段でもふたつ用意されていた。
 ひとつはご飯だけが敷き詰められ、もうひとつはおかずがぎっしりと詰められている。冷凍食品らしき物はあるものの、ちゃんと手作りされたおかずがたくさん入っていた。

 各々が口に入れて、関君が喋る。

「そう言えばあの日、俺達5時間目をサボる形になったけど、怒られなかった?」

 その話題に、ふるふると首を振る。

「ううん。別に何ともなかったよ」

「それなら良かった。俺、呼び出しくらったでしょ? 何処で何してたんだ? って担任に怒られてさ。それだけならまだしも、母親にも連絡されちゃって……。帰ってからもしっかり怒られたんだよ」

 最悪だったなーと、その日のことを思い出し、苦笑を浮かべる。

「そうだったんだ。私はどっちもなかったなぁ」

「そうなの? じゃあサボった5時間目が担任の教科だったから、余計だったのかな……」

 うーんと悩む関君を見ながら、妙な寂しさを覚えた。

 きっと。私はいてもいなくても、同じなんだろうな……。
 いてもいるかどうか分からないくらい、影は薄いし。
 いなかったらいなかったらで、全然気付かれないんだろう。

 だから関君とは違って午後の授業、ひいては帰りのHRにもいなくても、何もなかった。親に連絡がいくこともなかった。

 私はどうでもいい存在――。
 それはお弁当にも表れていた。私は作ってもらえないから、自分で作るしかない。
 でも関君のお弁当は愛情が込められているのが目に見えて分かり、同じようで全然違うのは明らかだった。


 そんなさもしい思いが、ぽつりと口を出る。

「関君は……。違うんだよ」

「え?」

「こんな美味しそうなお弁当も作ってもらえて。関君はいいね」

 妬みを含んだ声音で言ってしまうと、関君は面食らった顔をしていた。それを見てハッと我に返り、慌てて謝る。

「ご、ごめんなさい」

 ……私は最低だ。
 人に自分の負の感情をぶつけてしまうなんて。

 相手の顔を見れなくなって、下を向きながらご飯を食べていると、手元のお弁当箱の中におかずがひょいひょいと入れられた。

「え?」

 驚いて顔を上げると、関君がにこと笑う。

「お母さんが作るだし巻き美味しいんだ。鈴樹さんも食べてみて。後さ、この肉巻き。トマト苦手なんだけど、これだと食べれるんだよねー」

 何にもなかったように接してくれることが、本当に有り難い。ごめんねと心の中で謝りながら、うんと笑った。

「ありがとう。じゃあいただきます」

「うん。食べて食べて」

 言われた通り、だし巻き玉子は凄く美味しかった。


 初めての楽しい昼休みを過ごす私を、カイとフェルは邪魔することなく、黙って見守っていた。