死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「でも心まで魅了出来なかったのは、花ちゃんが初めてだよ。これまでの子は死ぬって分かったら、最期に女性扱いを望んできたから」

 如何に自分が王子様であるかのような発言に、カイは黙って最上級の引いた目をする。しかしその視線を受けても、フェルは全く意に介す様子はなかった。

「だから同じ魂を狩るにしても、僕に惚れされてから狩りたいなって思ったんだ」

 ふふと微笑み掛けられて、何て返事をしたらいいのか困る。とりあえず何かを言わなきゃと、口を開いた。

「は、はい……?」

「死の猶予期間があるから、それまでにはなるけど。これからよろしくね? 花ちゃん」

 そう言ってフェルは一歩前に出て、私に近付く。長い髪の毛を掬い上げると、ちゅっとキスを落とした。

「君の心を奪ってみせるから。覚悟しててね?」

「……はい」

 口が勝手に。無意識に返事をしていた。
 すでに心を奪われたのかも知れない。ぽーっと、のぼせたような顔で、フェルを見つめていた。

 そんな様子を見て、苛立ちを顔に貼り付けたカイが、ベチッとデコピンをかましてきた。

「痛いっ!?」

 痛みで我に返った私は、額を押さえながら何で!? と言う目を向ける。

「立って寝てたみたいだから、起こしてやっただけだ」

「こーら。カイ。女性には優しくしなきゃダメだよ?」

 そんなんじゃモテないよ? と言って、よしよしと私の頭を撫でる。

「何処に女性がいるんだか。それにモテたくて死神やってる訳じゃねーだろ」

「ふふ。カイってば、分かりやすいヤキモチを妬くねー」

「あぁん!?」

 完全に怒りを露にするカイ。それを笑ってあしらうと、フェルが背後に立ち――ぎゅっと抱き締めてきた。

「……へっ!?」

「こんな調子なんだったら、花ちゃんが僕のものになるのは時間の問題だなぁ」

 ねっ? と耳元で甘く、優しく囁かれる。それが起爆剤のようになって、つま先から頭のてっぺんまで。全身が沸騰するのが分かった。

「あ、ああああ。あの……!」

「どうしたの? 心臓。すっごく速くなってるよ?」

 ――そりゃ速くもなりますよ!!

 いくら私がこれまで恋愛経験がないと言っても、こんな扱いをされたら意識もしてしまう。

 そしてこれまでに免疫が、耐性がないからこそ、頭の中はパニック。顔が真っ赤になってることも分かるし、ずっと抱き締められていて、この状態をどうしたらいいのかも分からない。

 し、心臓がバクバクし過ぎて、息がしにくいし。
 何なら心臓が口から出そう……!
 と言うか。私はどうしていたらいいの!?