死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「へ!? は。え、えっと。そそ、その。わた、私は……!」

「ふふ。顔が真っ赤だよ。可愛いね。でも焦らなくていいよ」

 そ。そそそんなことを言われましても……!

 こんな女性扱いをされるのは初めてで、どうしたらいいのか分からないし、恥ずかしくてどうにかなりそうになる。
 心臓がバクバクして、呼吸困難に倒れそうだった。

 そんな私をよそに、フェルディヴェイルはそうだねと視線を上げて、今までのことを思い出しながら口を開いた。

「これまでの女性は頭を撫でてとか、抱き締めてって言うのが多かったかな? 後は――キスして欲しい。とか」

 それまで爽やか王子様だった雰囲気が、その一言で色気を纏った。ぐっと大人の雰囲気が醸し出され、色っぽい目で見つめられる。

 ぴっと背筋が伸び、石のように体が固まる。まばたきも忘れた目がフェルディヴェイルから視線を外せず、指1本すら動かせず、呼吸を止めて、ただ金色の目に見下ろされていた。

 何も言葉を発せなくなり、硬直する。その様子を何と捉えられたのか――空高い場所で止まり、顔に掛かった髪が優しく払われた。

 ゆっくりと。整ったフェルディヴェイルの顔が近付いてくる。それに更にパニックになった私は、突然動けるようになった。

「――はっちぇ……」

 待ってと言おうとした言葉に力が入らず、変な言葉になりながら、両手でフェルディヴェイルの口を塞いだ。

「わ、私、ど、どう、どう。キ、キスをするのか、わ、分からないし! そ、それに。わ、私なんかと、申し訳ないです……!」

 よく分からないことをどもりながら、伝える。
 キスを阻止されたフェルディヴェイルは、目をぱちくりとさせていた。

「本当は、今すぐにでも死にたいけど……。カイには、その、お、恩も、ありますので……。だから……ご、ごめんなさい!」

 このお姫様抱っこから逃れなければ……!

 ――今いる場所が、高度何百メートルの空の上だと言うことは全く頭にない。とにかく離れなきゃと言う思いでもがくと、するりと腕の中から滑り落ちた。

 途端猛スピードで落下していく。
 髪の毛やスカートが逆立ち、あまりの高さからの落下に、恐怖からぎゅっと目をつぶる。

 怖い……!

 身が千切れそうな風を切りながら、信じるのはひとつだった――。


 ――カイ――!