死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 キラキラとした清涼感ある笑顔なのに。
 言っている言葉は何ともエグい。

 死神界のルールは、もちろん私には分からない。ポイントのことだって、存在すると知っているだけで詳しくは知らない。

 ただカイが押されている状況を、ハラハラしながら見守ることしか出来ない。

 フェルディヴェイルが言ったことがエグくても、きっと正論なんだろう。カイはくっと顔を顰めていたが、何も言わなかった。

「自分のリストじゃないから、もらえるポイントは少ない。それでも稼げるんなら、僕はもらっちゃうよ。それにカイは鎌がなくて手も足も出せないんだから。楽に奪える状況を、みすみす見過ごすなんてもったいないよね!」

 言って、フェルディヴェイルは右足を大きく前に出した。と、駆けて行くのではなく、その場で鎌を投げた。
 飛んでいく先にいるのはカイ。すぐ目の前に迫ってきて、急ぎ体勢を整える。

 横回転して向かってくる鎌を避けようとして――その場からジャンプした瞬間。鎌がふっと消えた。

「え?」

 何処に? と驚きに声が出る。きょろきょろと鎌の行方を探していると、切羽詰まった表情のカイが私に向かって叫んだ。

「後ろだっ!」

「後ろ?」

 言われて後ろを振り返れば、にこりと微笑むフェルディヴェイルが立っていた。

「こんにちは」

 挨拶されたと同時、お姫様抱っこされる。カイにべっと舌を出し、そのまましっかり掴まっててねと言われる。理解が追い付く前に、速いスピードで空に上がっていった。

 カイの雑な抱っことは違い、丁寧で優しい横抱き。女性扱いされていると思うと、少し気恥ずかしい気持ちもあった。

「ふふ。君のことが欲しいから、攫っちゃった。でも優しくするから安心してね」

 乙女ゲームでしか出てこないようなセリフ。甘い言葉を恥ずかしげもなく言うフェルディヴェイルは、本当にゲームの中のキャラのようだった。

「優しく……?」

「まぁ鎌で斬られたって人間に痛みはないから、楽に死ねることに変わりはないんだけどね」

 そう言いながらも、どんどんと高度は上がっていく。

「でも僕ね、女性には最期の望みを叶えてあげてるんだ。魂をもらうからね、ありがとうの代わりに。だから君は何がいい? 僕が叶えられることなら、何でも言って」

 天使かと思う程に、穏やかな笑顔を向けられる。優しく右手が掬われ、手の甲にそっと口付けが落とされた。

 まさかの行為に。ボンッと頭が蒸発したのが分かる。
 経験したことのない出来事に、あわわわ! と口が開いた。