死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「――ヒュン!」

 力強く押されたことでバランスを崩し、地面に倒れる。顔を上げるともうすでに、そこにフェルディヴェイルがいる。そしてカイは、振られた鎌の柄を掴んで止めていた。

 私がまだそこにいたら……。

 きっと魂を狩られていただろう。
 危なかったな……と思う半面、心境としては複雑だった。

 ポイントの為と言えど、死なせないと守ってくれるカイ。でも死にたいと願う私からすれば、フェルディヴェイルの鎌で狩られても別に構わなかった。

 カイの状況。カイとの約束。今すぐにでも殺してくれる死神の登場。

 自分の欲望と思案がぐるぐると巡り、うーんと頭を悩ませる。
 それでもひとつだけはっきりとしていることは、私は邪魔と言うことだった。

 ふたりの視界の外でこそこそと、この場から離れる。


「あはは。言うだけあって、やるねー」

 押し、押されの鍔迫り合いのような状況で、フェルディヴェイルが楽しそうに笑う。

「だから言っただろ?」

「ふふ、そうだね。死神個々に身体的能力の差はないはずだけど」

「でも俺には通んねーよ。分かったら引け」

「えー。ヤダよぉ。ポイント欲しいもん」

 そう言って拮抗していた立場を、押し込んで相殺させる。一瞬ふたりの手が離れ、その間にフェルディヴェイルがカイとの距離を空けた。

「カイがやるってことは、認めてあげる。でも――その余裕、丸腰でいつまで持つかなぁ?」

 にやりと笑うと、また一瞬で距離を詰める。振られた鎌をカイが避けるが、すぐにまた狙われてしまう。

「腕だけのリーチと、鎌ありのリーチ。どっちが有利なのかは明らかだよねっ!?」

 フェルディヴェイルの言う通り、鎌の間合いの方が大きい。それに対し素手で向かうカイは、フェルディヴェイルの間近まで詰めなければ、攻撃が届かない。
 だからカイは防戦一方となり、避けるしか出来ない。フェルディヴェイルは手を休めることなく、鎌を上から右からと、色んな方向から振り続ける。

「俺達の鎌は争う為にあるもんじゃねーだろ!」

「だけどそんな決まり、どこにもないよね?」

 ヒュン! と左から振られた刃を避け切れず、カイの頬に赤い線が描かれた。ぴっと斬れた箇所から血が流れ出る。

 くっ……と膝が着かれた姿を見ながら、フェルディヴェイルがくすと笑った。

「死神同士争うなと言うルールもなければ、他の死神のリストを奪っちゃダメ、なんてルールもない。だったら――遠慮する必要なくない?」