死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 リスト奪い?

 意味が分からずきょとんとして、ふたりの様子を見守る。
 すると爽やかな笑顔を浮かべていたフェルディヴェイルが、突如あははは! と笑い出した。

「なーんだ。知ってたんだ。話が回るの早いね」

「それだけ悪行の数をこなしてきたってことだろ?」

「悪行? 酷いなぁ。僕は死神としての仕事を全うしてるだけ――」

 喋っている途中で、ふっと姿が消える。何処に? と思う間もなく刹那。
 黒い影が襲い掛かってきた。

「――だけどなっ!」

 瞬く間に距離を詰めたフェルディヴェイルが、出現させた鎌を振る。目の前に迫ってきているものが鎌の刃だと、普通の人間の私が分かるはずはなかった。

 当然。動くことは出来ない。対処することも出来ない。
 え? と固まっていると体が引き寄せられ、ガバッと何かに包み込まれた。

「あれー? 今の守っちゃうんだ。今まではこれで狩れてたんだけどなぁ」

 鎌を振り抜いた体勢を戻しながら、へぇと感心を口にする。それでいてにこりと、カイに笑い掛けた。

「お生憎様だな」

 そう言うカイの声が、頭の中で響くような近さで聞こえる。このシチュエーションは、つい最近もあった気が――。

 あれ……?
 私……また……。

 助かったと言う事実よりも。それより、今の状況に心臓がドキドキと鳴り始める。

 助ける為に自分の元に引き寄せたことで、カイに背後から抱き締められる形になっていた。
 そして残念だったなと皮肉を言ったことで、ぐっと力が入り、不可抗力に更に抱き寄せられる。

 ふぅんと不敵に笑うフェルディヴェイル。睨みを利かせるカイ。
 ふたりに緊迫した空気が流れる中、私はひとりあわあわしていた。


「でもこっちも聞いたよ? カイの鎌、壊れたんでしょ?」

「だから何だよ?」

「いくら何でも丸腰と武器ありじゃ、敵わなくない?」

「それはやってみなきゃ分かんないだろ?」

 お互い一歩も引かない言い合いをして、ふたり共に笑い合う。不思議な、不穏な空気になって、大きな鎌がくるりと回って構えられた。

「うん。そうだね。カイの言う通り。じゃあやってみよう」

 にこっと爽やかな笑顔を向けた一瞬。またフェルディヴェイルの姿が消えた。
 直後、カイは自分の背後に、ぐいと私を突き離した。