死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ……おばあちゃん家にでも行こうかな?

 家の中に入ることは出来ないけど、庭に入ることは出来る。
 無駄に庭でのんびりしていようかなと考えて、おばあちゃんの容体を訊きそびれていたことを思い出した。

 そうだ……。
 怒鳴られて、訊くのを諦めたんだった……。

 訊くのは怖い。けれどおばあちゃんの様子は知りたい。
 葛藤して、ふーと息を吐き出し、もう一度頑張ることを決めた。

 そうしたら足は家に向かっていく。
 それでもスピードはあまり変わらなかった。

 カイは何も言わず、空を飛んだまま付いてくる。
 人気のない道を歩く目の前。急に空から何かが降りてきた。

 ふわりと。羽が落ちてくるような所作は、初めて見る光景ではなかった。

 黒く長くて大きなマント。金色の目。
 キラキラ輝く長い銀髪――。

 その全ては死神の特徴であり、カイとは違う死神が私の前に現れた。

「やぁ」

 後ろでひとつにくくった髪が、さらりと揺れる。
 眩しい程の爽やかな笑顔で、挨拶がされた。

 この死神も乙女ゲームから出てきたキャラのように、背が高く顔が整ったイケメンだった。ただカイと違う特徴は、右目のそばにほくろがある。

 あまりに男前な登場に、思わず見とれてしまった。そんな私の近くにカイが降りてきて、不審そうに口を開いた。

「……フェルディヴェイル」

「授与の儀以来だね~。カイ」

 ふたりはどうやら知り合いらしい。
 と、そんな雰囲気はあるものの、カイから警戒している空気を感じる。
 まるで守るように、一歩私の前に出た。

「何の用だ?」

「何、だなんて冷たいなぁ。死神同士仲良くやろうよ」

 にっこりと。人当たりの良い笑顔が向けられる。
 イケメンの屈託ない笑顔の破壊力は抜群で、目に見えない何かにやられ、ふたりには見られないところでうっと怯む。

 この死神さんはカイと違って、優しそうだなぁ。

 カイは基本的には無愛想で、何かと面倒だと言ってため息が吐かれる。根は優しいけど、前置き建前があって渋々やってくれる……と言った感じで。
 でもこの人は何でもいいよと、笑って引き受けてくれそうな感じがした。

 死神さんも色んなタイプがいるんだなぁ。

 なんてことをのんきに思う私に対し、カイの不審感はますます強まる。それが声色に表れていた。

「仲良く? よく言うよ。お前の話は聞いてるぞ? ――リスト奪いってな」