死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 今日の帰りのHRが終わり、足早に教室を出る。靴を履き替えて昇降口を出ると、頭上にカイの姿があった。

 ……本当にずっと見張ってる。

 私が学校にいる間、離れることなくここにいたんだろう。有言実行にやっぱり真面目だなぁ――と言う言葉は胸にしまって、校門を抜けた。

 ゆっくりした足取りで、一応は家路に就く。それと同じ浮遊スピードでカイが付いてくる。
 人の気配がなく周りに誰もいなくなってから、ねぇと話し掛けた。

「私が学校にいる間、どうしてたの?」

「寝たり、人間観察してた」

「ひ」

 思わず言ってしまいそうになった言葉を、手で口を覆って止めた。

 危ない危ない。
 暇人だねなんて言っちゃったら、誰のせいだって絶対に機嫌を損ねさせちゃう。

「ん?」

「何でもないです」

 あははと笑って誤魔化し、再び足を進ませる。でも家に帰りたくない気持ちが、歩みをのろのろと遅くさせていった。

 決して家まで遠くない道のりを、わざわざ遅めるのが疑問に思ったんだろう。カイから問いが投げ掛けられた。

「何か時間潰しでもしているのか?」

「うーん。まぁ……ある意味時間潰しなのかな?」

 曖昧な返事をして、苦笑いを浮かべる。

「家に帰りたくなくて……。でも何処って、行くところもないから」

 だからわざとゆっくり帰っている。そのことを伝えると、興味なさげなふーんと言う呟きが返ってきた。

 ――昨日遅く帰って来たことに、何かを言われることはなかった。
 それはよかったけど。夕飯時に勉強の話題となり、両親は弟だけを見て、成績を褒め、高校受験の話で盛り上がっていた。

 当然私は蚊帳の外。話題を振られることもないし、会話の中に参加することもない。
 ひとりぽつんと浮く中でご飯を食べ、静かに立ち上がる。食べ終えた食器と、お弁当箱を洗ってリビングを出た。

 そんな私に気付いているのか、いないのか。
 名前を呼ぶこともなく、話し掛けることもなく。リビングの扉を閉めても、楽しそうな3人の話し声は聞こえていた。

 心臓がきゅっと締め付けられて、痛い。
 息が詰まって、息苦しい。

 そんな空間が、たまらなく嫌だった。