死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 さすがに校舎内までは入って来ず、授業中は外で待機しているっぽかった。

 昼休みになって、いつも通りトイレで過ごした私は、チャイムが鳴って教室に戻っていた。

 4組が近付いてきて、廊下にいる子達が何やらクラスの方を注視している。それを見ながらひそひそと喋っていて、何だろう? と思った。

 とは言え自分の教室なので、中に入る為に横を通り過ぎる。廊下と教室への境界線を越えた時、あっ! と声がした。

 けれど自分に掛けられたものだと思わなかったので、反応することなく中に入る。それから慌てた声で、名前が呼ばれた。

「す、鈴樹さん!」

 学校内で私を呼ぶ人はいない。皆無に近い。
 だから反射的にパッと振り返ったが、きょろきょろして立ち尽くした。

「鈴樹さん」

 もう一度呼ばれて目線を向けると、やぁと手が挙げられる。ぎこちなく手を振っていたのは、長い前髪にぽっちゃりした男の子で――私はあっと目を開いた。

「関君」

 扉の傍にいたのは関君で、小走りで駆け寄る。

「どうしたの? 私のこと、呼んだ?」

「う、うん。呼んだよ。あの、お昼一緒にどうかなと思って来たんだけど……。鈴樹さんいなくて。でも会いたかったから、もう1回来たんだ」

「そうだったんだ。ごめんね。私、昼休みはいつも、あっちの校舎に行ってるから」

「そうだったんだ」

 関君と話をしていると、周りからの視線が嫌と言う程感じる。
 好奇の目。蔑んだ目。バカにしたような目。
 私達を見ながら嘲笑し、何かを言っている。

「何あれ? キモい同士が仲良くしてる」

「お化けとデブで、ある意味お似合いじゃん?」

「いくら私がひとりだったとしても、友達は選ぶけどなー」

 聞きたくなくても耳に入ってくる陰口。もやもやと嫌な気持ちが沸き起こってきて、途中から会話が頭に入ってこなかった。
 でも顔を上げて関君を見ると、陰口が聞こえていないのか、気にしていないのか。楽しそうに笑っていた。

 そんな笑顔を見ていると、嫌な気持ちが薄れていく。気にする私がバカみたいに思えて、ありがとうの気持ちを込めて微笑むと、関君が照れたように笑い返してくれた。


「キーンコーンカーンコーン……」

 5時間目が始まるチャイムが鳴る。

「あ、そろそろ戻るね」

「うん。来てくれてありがとう」

「いや、ううん。あの……その。明日は……一緒に、お昼食べない……?」

 恐る恐る訊ねられ、まさかのお誘いに驚く。でもすぐににこっと笑った。

「うん。一緒に食べよ」

 そう答えれば、関君の顔がパッと明るくなった。

「やった……! ありがとう。じゃあまた明日!」

 手を振って、足早に戻っていく。その姿に私も手を振って、自分の席に着いた。