死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「え? 死神って死ぬの?」

 決して嫌味ではなく素朴な疑問で訊ねただけだったが、カイの顔にイラッとした表情が露になった。

「あー……ホント。手元に鎌があれば、今すぐ狩ってやるのにな」

「私も、今すぐにでも殺して欲しいよ?」

 そう言えばナチュラルな煽りとなったようで、イラ付いた顔をしながら、にこぉ……と笑い掛けられた。
 それでも構うことは止めたようで、ふわりと上空に浮く。ふてぶてしく足を組んで、座った。

「で。その猫どうすんだよ?」

「うーん。本当は埋葬してあげたいけど……。出来そうにないしなぁ」

 住宅街の中にそんな所はない。もしあったとして土を掘っていれば、不法投棄、不審者扱いされ、通報されることは間違いない。

 だからまた轢かれないように、道の端っこに子猫を下ろす。後は市役所の担当の人に任せることにした。

 後ろ髪引かれる思いはあったけれど。この子猫がもう苦しみから解放されていることに、よかったと微笑みが浮かんだ。

 立ち上がって、後ろにいるカイの方に振り向く。

「ありがとう」

 改めてそう言えば、お礼を言われるのは予想外だったのか。カイの黒い瞳が丸くなる。でもそれは一瞬で、すぐにふいと目を逸らされた。

「これが最初で最後だ」

「うん」

 やっぱり何だかんだ言って、カイは優しいなぁ。

 ふふと自然に笑みが零れる。けれどこんなことを言えば、絶対に嫌そうな顔をするので――想像だけして、また笑いが込み上げてきた。

 街灯が付き始めた道を歩き、学校に戻っていく。私の頭上を、カイが付いて飛んできた。



「――――みぃつけた」

 そんな私達から離れた所。電柱の上にしゃがんで、こちらを見るひとりの男――。

 身の丈ギリギリある、長く大きな黒いマント。
 暗がりの中でもキラキラ輝く銀髪。
 猫のように細長い瞳に、金色の双眸――。

 後ろでひとつに括った長い髪が、吹く風に揺れる。親指と人差し指で作った丸から、ふたりを発見して、にやりと笑う。

 そんな男の左手には、黒鉄に光る大きな鎌が握られていた。