死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「空は飛べねーよ。マントの効果じゃなく、俺達の能力だからな」

「なーんだ」

 残念と口を尖らし、それならともうひとつ訊ねる。

「じゃあ冥界には行ける?」

「知らね」

「え!?」

 ひと呼吸。考える間があってから答えられたことに、大きな声を出した。

「知らないの?」

「だって試したことねーし。って言うかそもそも、人間を冥界に連れて行くなんて言う場面になんないんだよ」

「だったら試してみよーよ」

「い・や・だ・ね。何で俺が冥界観光してやんなきゃいけないんだ」

「じゃあもう1回貸してよ。私ひとりで行ってくる」

「アホか。それに本来冥界は死者の世界だ。生きてる人間が行ける訳ねーし、行けたとしてどうなるか分かんねーだろ」

「それって死ぬかもってこと? それならそれで、私は嬉しいけど?」

 思ったことを口にすれば、カイの表情がイラッとする。こめかみに青筋が見えた気がして――ベチッとデコピンを食らわされた。

「痛っ!」

「悪い。虫がいた」

「――絶対嘘!」

 私が約束を無視するようなことを言ったからでしょ!

 おでこを押さえながら、じーと睨んだ目を向ける。しかしカイはべっと舌を出し、空中へと上がった。
 仮に私がマントを奪いに来たとしても、決して届かない位置。そこで高みの見物をするので、更に恨みを込めた視線を送った。

 返す前に試してみればよかった。


 そんな後悔はさておき――。
 ふぅと。気を取り直す息を吐き出す。

 面倒だ嫌だと言っている時間はおしまい。校門が閉まってしまう前に、さっさと学校に戻らないと。

 ミルクティーを手に、公園を出る。
 ここは私が思っていた所で間違いはなく、10分程で学校に着きそうだった。

 暗くなった道を歩く頭上。空を飛ぶカイも一緒に移動してくる。

「どうして付いて来るの?」

「アンタいつ、何処で、死のうとするか分からないからな」

 そう言われると、返す言葉がない。

「残り期間はずっと、アンタを見張ってることにするよ」

「……意外と粘着質だなぁ」

 ぼそりと。本当に小さい声で呟く。

「何か言ったか?」

「いえ、何も言ってません!」

 聞こえたりしたら、また不機嫌になっちゃう。

 危ない危ないと、指で口を押さえた。


 ――カイと話をして意識がそっちに向いていたこと。辺りがいつもより暗くなっていたこと。
 それらの要因があってか、周囲の確認もせずに、横断歩道を渡ってしまう。
 住宅街にある、信号機のない横断歩道。送り迎えや帰宅時間になった今、車通りは多くなっていた。

 スピードを出した車が走ってくる。
 それに気付くことなく、私は横断歩道を渡り始めていた。