死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ちびちびとミルクティーを飲み、すっかり冷めてしまった頃。雨の気配が止んだ。カイが土管から顔を出して、止んだぞと言う。

 何時間ぶりか? 何分ぶりか?
 土管から出るとまだ灰色の雲が空を覆っていて、普段より辺りは暗くなっていた。

 公園内にある時計を見て、今が5時半を回っていることを知る。

「わっ……。結構な時間、ここにいたかも」

 昼休みが終わってすぐ屋上に行き、何だかんだあって、5時間目が終わったまでは記憶にあった。
 そこから気を失って――2時間以上ここにいたことになる。

「学校……。でも入れるかな?」

 校門が閉まる時刻が分からない。でも部活動をしている人達もいるので、まだ開いているような気もする。

「学校に戻るのか?」

「うん。鞄を取りに行かなきゃ」

 別にスマホを含め、なくても困らない。けれどお弁当箱は替えがないので、出来たら取りに戻りたい。

 面倒だなと言う気持ちを押し殺し、行くかと決意する。地面に長く垂れたマントを脱いで、カイに返した。

「これ。ありがとう」

「もういいのか?」

「寒さはマシになったし。それにこれを着ながらだと、逆に歩き辛いから」

「別にこのマントだって、他の人間には見えないぞ?」

「あ、そうなんだ。でも雨にも濡れないし、泥にも汚れないの不思議だね」

 雨が染み込んだ土は泥水となって、ぐちゃぐちゃになっている。そんなところにマントを引きずっていたが、少しも汚れていなかった。

「言っただろ? この世界のものに影響は受けない」

「みたいだねー」

 軽い関心を口にしながら、じっとカイを見る。これまでマントを羽織っていたから分からなかったが、脱いだ下は、こんな服装だったんだと知った。

 軍服のようなカチッとしたトップに、タイトなズボン。低めのヒールのあるブーツを履いていたが、その全てが黒色だった。
 トップに付くボタンと、ベルトだけがシルバーで、凄くオシャレな着こなしをしている。

 背も高いし、スタイルも良くて。
 おまけに顔も良い。サラッサラの銀髪に、金色の目て……。

 凡そ乙女ゲームに出てくるイケメンの要素が揃い過ぎている。
 オタクなら涎もんですぜ? と、誰目線か分からないことを思いながら、やれやれと頭を振った。

 返したマントを羽織る姿を見て、ふと思ったことを訊いてみる。

「私は死神が見えるから、マントも触れるってことだよね? だったらそれで空も飛べるの?」