死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ミルクティーのおかげで少し暖まったが、一時的に過ぎなかった。服が濡れている以上、雨が降る外では寒さを覚えてしまう。

「――っくしゅ!」

「おい、大丈夫かよ?」

 大きなくしゃみが出ると、すかさず訊ねられる。

「さっきよりかはマシな気はするけど。如何せん服は濡れたままだから、寒くて」

「着替えか。さっきの学校? にはあるのか?」

「うん。ジャージがあるから、それに着替えれば」

 ここでふと、今何時だろう? と思う。スカートのポケットの中に手を入れてみるが、そこには何もなかった。

「スマホ……。鞄の中だ」

 と、関君を追って屋上に入る前。扉の傍に鞄を置いたことを思い出す。
 体感的にもう全ての授業は終わっている気がしたが、学校に戻らなければならないことが、たまらなく億劫だった。

「学校戻んなきゃ。めんど――ぶえっくしょん!」

 言っている途中で、全然可愛くないくしゃみが出る。でも気にすることなく、鼻水をずっとすすった。

「とりあえず、これ羽織っとけよ」

 そう言って、カイが膝の上にあったマントを背中に掛けてくれる。

「雨が止むまではここを動けねーしな」

 カイでも大きいのに。それより背の小さい私が羽織ると、余るくらいすっぽりと包まれる。乱暴ではあるが私をおくるみ状態にして、つまらなさそうに雨の降る向こうに目をやった。

 ぽつぽつと地面を叩く雨音だけが、土管の中に響く。もらったミルクティーの熱を感じながら、ねぇと口を開いた。

「……どうして、カイはこんなに優しくしてくれるの?」

 意識を失った私を放ることなく、膝枕をして目が覚めるのを待っていてくれた。
 寒いと言ったら暖かい飲み物を用意して、自分が着るマントを羽織らせてくれる。

 正直。誰かにこんなに優しくしてもらったのは、久し振りだった。
 おばあちゃんが入院して会えなくなってからは、誰も私に優しく接してくれることはなかった。

 面倒くさそうにしながらも、ちゃんと私のことを考えてくれている。
 それが嬉しくて恥ずかしくて。でも気になって不安になって。だから訊ねてみた。

 だって……こんなに優しくされたら――。


 向こうを見ていたカイが、こっちを向く。端正な顔に、特徴的な金色の瞳が、まっすぐに私の目を射抜いた。

「――そんなの、決まってるだろ」