「それより、体の方は大丈夫なのか? まだ寒いか?」
怪訝な顔で訊ねられ、体の様子を確認してみる。
濡れた服は半乾きになっていて、肌に貼り付く感じは何とも気持ち悪い。
そう言えば……。
気を失う前、頭がくらくらして……。
頭がふわりと舞って、目眩に似た感覚があった。
それは今はないけど、体がぶるりと震える。
「寒い……」
寒さから身を縮め、自分で自分の体を抱き締めれば、カイがため息を吐いた。
「待ってろ」
立ち上がったかと思えば、すっと姿が消えた。土管の中、高身長が立ち上がることは絶対に出来ないのに。
「何処に行っちゃったんだろ……」
ぽつんと。暗く狭い空間にひとりぼっち。雨が降っているせいか物悲しく、取り残された心細さを紛らわす為に、置いていかれたマントを胸に引き寄せて握った。
やがて突然にして、隣にカイの姿が現れた。気配もなく音もなく戻ってきたことに、びくっ! と大きく驚いてしまう。
ドキッ! と心臓が跳ねてまだ大きく鼓動が鳴り響く中、カイは気にもせず座る。片膝を立てて、ほらよとぶっきらぼうにペットボトルが手渡された。
「あ、ありがとう」
おずおずと手を伸ばし、受け取る。キャップがオレンジ色からして、それがホットの飲み物だと言うことが分かる。
小さめのミルクティーを両手で包むと、何とも言えない、じんわりとした暖かさを感じた。
「あったか~い」
しばらくカイロのようにして暖かさを堪能してから、キャップを開ける。ごくごくと2口飲めば、思わずはぁと感嘆の息が漏れた。
「あま~……。あったまるぅ……」
小さな幸せに浸る私を横目にして、カイが大袈裟だなと笑う。もう1口飲んでから、キャップを閉めた。
「ありがとう。でもこれ、何処で買ったの?」
死神が人間界のお金を持っているとは思えなかった。しかも普通の人間には見えない死神が、何処で用意したんだろう?
純粋に湧いた質問を訊ねると、さらっと買わねーよと言われた。
「俺達死神は物体をすり抜けることが出来るし、物質に限り、手に持った物も同じような効果になる」
「……なるほど」
つまりコンビニかスーパーなんかに入って、普通に売り場から取ってきたってこと。要はパクってきた物だと分かり、苦笑いを浮かべる。
店側も透明人間と、透明になった物を捕まえることは出来ない。何だか申し訳ない気もしたが、今回は仕方ないと割り切り、有り難く頂戴することにした。
そして同時にこの狭い土管の中、カイが頭をぶつけなかった訳も知った。

