死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「――おい! しっかりしろ!」


 ……誰かが私を呼んでいるような気がする――。


「――大丈夫か!?」

 この声は……カイ……?


「ん……」

 夢の中で聞こえていたのか。遠くで聞こえていたのか。
 どちらか分かる前に、意識が覚醒する。ゆっくり瞼を開けると、低い天井に見たことのない景色が目に入った。

「ここ……何処……?」

 まさか黄泉の世界?

 薄暗さからそんなことを思っていると、視界の中に黒いものが入り込んできた。

「やっと起きたか」

「……カイ?」

 現れたのはカイの顔だった。

「大丈夫か?」

「大丈夫……だと思う。あれ、私どうしたっけ……?」

 心配を訊ねる言葉ではあるが、私を見下ろすカイの表情にあまり心配そうな色は伺えない。
 顔の距離感の近さから、自分が寝転んでいることが分かった。そうして何やら頭の下に暖かみがあり、膝枕されていることにも気付く。

 でもまだ意識はぼんやりしていて、ゆっくりと起き上がった。

 上体を起こしたことで、体に掛けられていた物が落ちる。黒色をした長いそれは、布団やブランケットではなく――

「マント?」

 腕を通す袖と頭に被るフードがあり、カイが身に纏っていた物だと分かった。

「アンタ寒いって言ってただろ?」

 だから掛けてくれたんだ。

 表情とは裏腹の優しさにじーんとする。
 カイと話を交わしている内に、意識がはっきりとしてきた。

 薄暗く、おしりに感じるコンクリートのひんやりとした冷たさ。狭く低いここは、何か洞穴のような、こたつの中に潜り込んだ空間のような。
 ただ左右にある丸い枠から外の様子が見えて、土管かトンネルの中だと言うことが伺えた。

「ここって、土管の中?」

「あぁ」

 言われて、やっぱりと思う。
 土管のトンネルが付いた、滑り台の遊具がある公園が学校の近くにあった。

「アンタ喋ってる途中に気絶したんだよ。とりあえず雨が凌げる場所にって思ったんだが、さっきいた場所に良さそうな所がなかったから、ひとまず人目の付かなさそうなここに連れてきた」

 雨が降ってるから、来る奴はそうそういないだろ? と付け加えられる。確かに少し雨足は強くなっていて、こんな日に遊びに来る人はいないだろう。
 土管の中、端の方は濡れ、雨水が溜まっていた。