死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「それで……鈴樹さんの前には、何がいるの?」

「あっ。えっと、それは――」

「キーンコーンカーンコーン……」

 ここで5時間目の終わりが告げられる。
 初めて授業をサボったことを、チャイムの音を聴きながらぼーっと実感していると、続け様に放送が入った。

「1年1組の関聡獅。今すぐ職員室まで来なさい。繰り返す――」

「うわっ。担任から呼び出しくらっちゃった」

 関君が慌てて立ち上がり、勢いよく頭が下げられる。

「鈴樹さん、ごめんね。俺、行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」

 もう一度頭を下げて、この場から走って去っていく。ふと扉の前で足を止め振り返ると、名前が呼ばれた。

「鈴樹さん。また……明日」

「うん。また明日」

 ぎこちなく振られた手に振り返すと、関君が照れたように笑う。それから屋上を出ていき、バタンと扉が閉まった。


 しんとした静けさが流れ、相変わらずまだ降る雨が私を濡らす。可動域の悪くなったロボットのように、ゆっくりカイの方を見上げると――未だに不信感を露にしたじと目で見下ろされていた。

「えっと……。その、助けてくれて、ありがとうございます……?」

 疑問形でお礼を言うと、はぁーと大きなため息を吐かれてしまった。

「ホントアンタ、油断も隙もないな。様子を見に来て正解だったよ」

「いやー。死ぬつもりはなかったんですよ? ほら、カイとの約束もあった訳だし? でも関君に感化されたと言いますか」

 言い訳をすれば、ふーんと信用のない声で返事される。宙に座っていた体勢から地面に足を着けると、私の前に立った。

「でもアンタ、意外と自分以外のことも考えられるんだな」

「考えられる? 何を?」

 言われた意味が分からず、はて? と首を傾げる。
 と、その反動からか、くらりと頭が揺れた。

 ……あれ……?
 何か……頭がくらくらする……。

 突然訪れた体調不良に、手で頭を押さえる。

「いや、俺の独り言みたいなものだから、気にしなくていい。ってそれよりアンタ、びしょ濡れだけど大丈夫なのか? 人間は風邪って言うのになるんだろ?」

 そう言われよく見れば、雨が降る中だと言うのに、カイは不思議と全く濡れていなかった。

「死神は雨に濡れないんだね」

「影響は受けないな」

「凄いねぇ……」

 ぽつりと呟くが、意識はぼんやりと遠くにある感じだった。眠気に抗えず意識が飛びそうな。
 そんな感覚になりながら、何とか受け答えをした。


「でも……ちょっと寒いから――」

 着替えに行くね。
 その言葉を言う前に限界を迎えてしまう。意識が遠退いて、体がぱたりと地面に倒れた。

「お、おい!」

 様子を見ていたカイが驚き、私の上体を起こす。

「大丈夫か!? おい!」

 呼び掛けは全く聞こえていなかった。目を閉じ意識を失くした私は、カイの腕の中で揺さぶられていた。