死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「で? 何でふたり仲良く、飛び降りなんかしようとしてたのかなぁ?」

「い、いやぁー……、これはその。成り行きと言いますかぁ」

 気まず過ぎて目が合わせられない。しどろもどろになりながら、何とか答える。

「昨日あれだけ念押ししたもんな。それを、まさか、忘れる訳ないよなぁ?」

「その通り! 忘れるなんて、滅相もございません!」

 本当のところは、すっかり忘れていた。
 関君に絆されて、じゃないけど、死ねるなら願ったり叶ったりだし。
 それに関君をひとりぼっちでいかせたくないなと思ったら、約束なんて頭になかった。

 ……と。カイには口が裂けても言えないけど。


 そのことを隠しながら、あはははと笑う。それは時代劇に出てくる、お代官様に媚びへつらう悪い商人の振る舞いのようだった。

 そんな私の魂胆など、カイにはお見通しだったのだろう。信用0の目でじー……っと射抜かれる。

 居心地の悪さに、愛想笑いを治められずにいると、あのー……と様子を伺う声が聞こえてきた。

「鈴樹さん……。その……誰と喋っているの?」

 どうして助かったのか? その疑問は当然あったと思う。
 見えない何かに腕を引かれ、宙に浮き、空を飛んで助かったのだから。

 関君からすれば何も分からず、疑問よりももしかしたら恐怖の方が勝っていたかも知れない。
 それでも私がひとりで喋っているものだから――彼の質問を聞いて、きょとんとしてしまった。

「関君。見えてないの?」

「えっと……。何が……?」

「私の前」

「俺の目には鈴樹さんしかいないよ……?」

 その言葉を聞いて、そっかと思う。全てが分かって納得したら、ふふふと笑いが込み上げてきた。

「あはは。そっかぁ」

 突然笑い出したので、関君がえ? え? と混乱し出す。カイも何だこいつ? と言う目で、少し私から身を引いた。

「ど、どうしたの? 鈴樹さん」

「あ、ごめんごめん。いやね、関君は今死ぬ人じゃないんだなーと思って」

「……え?」

 どう言うこと? と私の発言で、更に混乱に陥っている。
 目に浮かび上がった涙を拭ってから、関君に笑い掛けた。

「今は確かに苦しいかも知れないけど。関君には未来があるんだよ」

「未来……?」

「うん。少なくとも、今は死ぬ時じゃない」