死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 昼休みとなり、私はいつも通り校舎棟とは違う、別の棟のトイレの中で過ごしていた。

 ひんやりと冷たい便座に座り、お弁当を食べる。授業中ではなくなると人気のないこの棟で、雨音だけが聞こえていた。

 お弁当を食べ終え、お箸をケースの中にしまう。持ってきていた鞄から本を取り出して、昨日の続きを読み始めた。

 自死をする為の参考に買った本。
 昨日まではじっくりゆっくりと頭に叩き込むように、丁寧に1文字1文字を読んでいたが、その必要がなくなってしまった。

 何ならもう読まなくてもいいくらいだけど。そうしたら昼休みの時間つぶしが出来ないので読む。

 でも内容はあまり頭に入ってこなくて――考えるのは鎌のことだった。

「直ったかなぁ?」

 一瞬だったとは言え、完全に顕現していた姿に思いを馳せる。

 湾曲した大きい刃は立派で、黒い色と相まって威圧感と言うか迫力があった。シンプルさが逆に凄さを感じさせて。
 スパッと。簡単に魂を狩り取ってくれそうだった。

「早く直って欲しいな……。何なら今日でもいいのに」

 1日でも早く。1時間でも1分でも早く。
 1秒でも早く死にたい。

 本を閉じて目を閉じ、願って祈る。

 そうしていると、昼休みの終わりを告げるチャイムが聞こえてきた。

「終わっちゃったかぁ」

 はぁとため息を吐いて、本を鞄の中に入れる。鞄掛けから下ろして、トイレのドアを開けた。


 教室に戻る廊下を歩く。左側に窓があり、そこから校舎棟が見える。
 朝から降っていた雨はその強さを弱めていたが、窓に張り付いて流れていた。そんな雨が気になって外に目を向ければ――ある場所に人が立っているのを見付けた。

 そこは校舎棟の屋上。普段出入りすることは出来ず、屋上に出る扉には鍵が閉まっている。

 そんな屋上に人がいて――しかも落下防止柵を越えようとしていた。

 スラックス姿からして男の子。
 今にも飛び降りようとしている様子を、ガラスに額を押し付け食い入るように見て、私はハッと走り出した。