死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ――カイに家まで送ってもらい、玄関の前に下ろされた。

「じゃあな」

 それだけを言ってまた空を飛んでいった姿を見送りながら、カイもお家に帰るのかな? と思った。

 家に着いた時刻は9時を回っていた。伝言も連絡もなく家にいなかったことを、案の定お叱りと言う名の文句を言われた。でも幸いだったことは、もう父親は寝室に行っていたと言うこと。だから母親だけの小言で済み、内心でほっと安心した。

 夜ご飯も捨てられていなかった。ラップのされていない、そのまま放置されたお皿をレンチンして、遅い夜ご飯を食べる。
 揚げ過ぎて焦げたコロッケに、しなってしわしわのプチトマト。2切れだけ残っていた蓮根のきんぴらと、千切れてワンタンの皮だけになったスープ。

 私に出されるご飯はいつもこんな物だった。
 焼き過ぎたり揚げ過ぎて真っ黒になった物や、端っこの硬い部分。脂身しかない肉や、見た目の悪くなった野菜をかき集められる。

 それでもないよりかはマシで。食べ終えた食器類を洗って片付け、そそくさと自分の部屋にと向かった。

 お風呂に入るのは、家族皆が寝静まってから――。
 それを待っていればいつも日付けが変わる間近になるが、誰かに会うくらいなら遅くなるくらい何ともなかった。

 自室に入り静かに扉を閉めて、ベッドにダイブする。ぼすんとスプリングが跳ね、揺れが収まってから、はぁーと大きく息を吐き出した。

「何か今日は……すごく疲れたなぁ……」

 よくよく思い返してみれば、今日あったことは日常から大きくかけ離れた出来事だった。

 死のうと思っていたら、まさか死神がやって来て……。
 しかもその死神は、本当に本物で……。

 ただ鎌が壊れてしまって、死に損なった。
 でも殺してくれると約束をしてくれた。

 期限は1週間。
 1週間の内に死ねるんだ――。

 死の確約と余命の宣告。そこに恐怖や怯えはなくて、ついに死ねるんだと言う安心感しかなかった。

 これで……おばあちゃんがいなくなっちゃう前に死ねる。
 私が死んだら、唯一悲しんでくれる人。
 死んだ時くらい。誰かに泣いて欲しいから――。

 そんな自己的な願いが叶いそうな喜びに浸っていたが、ふとカイの言葉が思い出される。

『――何かと思えば。くだらねー』

 冷たく、呆れた物言いをされた、あの一瞬が頭を過ぎる。声のトーンまで鮮明に再生されて、テンションは下がった。


 あなたには分からないよ……。

 心の中で呟いて、シーツをぎゅっと握り締める。

 誰かからにも蔑まれ、蔑ろにされる悲しみと苦しさを。
 ひとりになってしまうと言う絶望を。

 そして死にたいと思う気持ちも――。


 苛立ちなのか不満なのか。悲しみなのか苦痛なのか。何とも分からない、やり切れない感情がぐるぐると渦巻く。

 目を閉じ感情を持て余していると、お腹が満たされたことにより、いつの間にか眠ってしまっていた。