死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「そう言えば死神って、ご飯食べるの?」

「食べるが、人間とは感覚が違うな。空腹なんてのはないが、満腹で満たされるってのもない。だから何となく食べたいなって時に、ちょっと口に入れる程度だな」

「そうなんだ。じゃあ美味しいとか、マズイとかもないの?」

「いや、それはある」

「へぇー」

 死神の事情を知って、感心を呟く。それからいただきますと言って、飴を口の中に放り込んだ。

「この飴って、人間界の物なの?」

「いや、死神界の物だな」

「え!? 食べちゃったけどいいの!?」

 驚いて、カイの顔を見上げる。けれど本人はあっけらかんと答えた。

「知らねーけど、大丈夫だろ」

「えー……。軽ぅ……」

 つい引いてしまうが、仮に毒だったとしても、それで死ねるならいいかと思い直す。
 それならと、口内の飴をころころ転がし、味を堪能することにした。

 色からして桃や苺の味がして、可愛らしさからすっきりした甘さかと思ったけど――。
 濃厚な蜂蜜のような味がひどく、くどい甘さが口の中にねっとりと広がった。

「……この飴。すっごく甘いね」

「だろ? だから俺き」

 意地悪く笑うカイが、途中で言葉を止めた。それは私の声が震えていたからかも知れない。

「おばあちゃんの味がする。懐かしくて、美味しいなぁ……」

 甘いのが苦手な人なら、きっと食べられない甘さ。でもおばあちゃんがよくくれた飴の味によく似ていた。

 久し振りに食べた懐かしさに、思わず涙ぐんでしまう。泣きマネじゃなく本当に浮かび出た涙を、自分の甲で拭った。

「よかったな」

 カイがぽつりと呟く。相手から表情は見えないけど、私は満面の笑顔を浮かべた。

「うん。ありがとう」

 ふふと笑顔を零しながら、ころころと飴を転がす。

 懐かしさに浸りながらの浮遊移動は、想像以上に楽しいものになった。