死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 ぼんやりとカイを見ていると、優しかった手が引っ込められる。と思いきや、人差し指が額に当てられた。ぐぐっと力が込められていき、あっ……と何かを察知する。
 頭が後ろに押され、仰け反っていく。

「何か……怒ってらっしゃいます……?」

「あぁ、そうだな。約束をちゃんと守らねーから、怒ってるかもな?」

「ご、ごめんなさい」

「いいか? もう一回だけ言っておく。俺が死なせてやるから、それまで待て」

「は、はぁ~い……」

 凄みの利いた声に、そっと手を上げる。今度私が素直に謝ると、ため息を吐きながらカイが立ち上がった。

「とりあえず、アンタを家まで送っていってやる。それが詫びだ。極力人目に付かないようにはするが、奇妙に浮いて移動する怪しい奴だとは思われるからな」

「別に大丈夫だよ。今更どう思われようと、何も変わんないから」

 諦めたように言う私に、カイは何かを言いたげだった。でも飲み込んだようにそれについては言及せず、私の腰に腕を回した。

「じゃあ行くぞ。適度に道案内はしろよ」

 荷物を脇で抱え込むような格好で、タワーから離れていく。足が宙ぶらりんとなって、何だか思った飛び方じゃないなと思った。

 普通はこう……。
 お姫様抱っこされるものじゃない?

 理想とは違う現実に疑問が過るものの、まぁいいかと思う。このままタワーから下ろされ、はいバイバイとされるよりかは、こうして家まで連れて帰ってもらえる方が断然良かった。

 お腹が空いて……。力が入んないもんな……。

 ここから歩いて帰る気力はない。それを思えばどんな扱いでも、楽をしたかった。

「ぐうぅぅ……」

「あっ……」

 わりと大きめの腹の虫が鳴る。恥ずかしいと言うよりか、今はただひもじい気持ちが勝っていた。
 お腹に手を当てると、上から訊ねられる。

「お腹が減ってるのか?」

「もうグーグーですよ。空き過ぎて力も出ないよ……」

 助けてジャムおじさーんと、手を伸ばす。そんな私をガン無視して、カイはポケットの中に手を入れ、ごそごそと何かを漁った。
 あったと聞こえてきて、目の前にそれが現れる。

「飴……?」

 ピンクと白のストライプ柄の包装紙に包まれた、丸い物。形から察するに、飴かな? と思う。

「あぁ。やる。腹の足しにはならないが、気は紛れるだろ」

「いいの? わーい。やった。ありがとう」

 受け取り、端を引っ張って包装紙を開ける。中から可愛い桜色をした飴玉が出てきた。