死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 家に帰っても。
 どうせ文句を言われるだけだ――。

 母親だけならまだしも、時間帯からして父親も帰っている頃。そうなればダブルでの不平と小言は、正直堪える。
 そしてそんな私を嘲笑うように見る弟が、簡単に想像出来て――このまま帰らない方がいいんじゃないか? とさえ思えた。

 そんな風になるくらいなら、帰りたくない……。

 ひと度そう思えば、負の感情は徐々に膨らんでいく。

 元々私は死のうと思って、あの空きビルに来たんだよ。
 でも色々あって、ここにいる訳で……。
 帰って嫌な思いをするくらいなら、死んだ方がマシ。

 そうだよ……。
 私は死にたいの……。

 ――家に帰る必要なんて、ない――。


 蹲っていた私は、すっとその場に立つ。航空障害灯がピカピカ光り出した床を歩き、ギリギリのところに立った。

 おあつらい向きに、今の私は死ねる場所を得ている。ここから落ちれば絶対に助からない、確実に死ねる舞台。

 思考放棄した頭の中は死の感情に支配され、カイとの約束はこれっぽっちもなかった。

「死のう」

 ぽつりと呟いて。床から足を離した。