死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「――あっはっはっは!!」

 工房内に響き渡るエンバーの笑い声。さっきまで寝ていたとは思えない爆笑っぷりで、ソファの上に仰向けになって腹を抱えて笑っていた。

「鎌が壊れた? ボクこの仕事ちょー長いけど、そんなの聞いたことないよ~」

 あはははと笑い転げ、涙まで流し、あーヤバイーと言う。

 ――鎌が壊れた。と言う事情を、カイは真剣に伝えた。しかし途端にエンバーが吹き出し、爆笑される――今に至っている。

「それ本当なの? 冗談なら笑えないよ? その壊れたって言う鎌見せてみてよ」

 そう言われ、カイはムスッとした顔で鎌を出現させる。本来なら立派な湾曲した刃を持つ姿が現れるが、出てきたのは1本の長い柄だけだった。

 それを見たエンバーは目を丸くさせ――

「本当に壊れてるじゃ~ん! 何それ? もはやただのぼ・う!」

 ぎゃはははは! と更に笑い声は大きくなる。
 ここまでくればもうバカにされているだけであり、カイは苛立ちに大声を出した。

「だから壊れたって言ってるだろ! 早く直しやがれ!」

 笑い死ぬのでは? と思う程にひぃひぃと笑った後、目に浮かんだ涙を指で払い、ようやく笑いが引っ込められた。

「あー可笑しかった。それ、ちょっと貸してよ」

 ちょうだいと言って、エンバーは鎌を受け取る。本当に棒に成り果てた柄を握り、まじまじと、その全体を観察した。

「刃だけがぽろっと落ちたの?」

「いや、亀裂が入って、それから割れた」

「ふーん」

 そう言って、刃があった部分を見つめる。指でそっと撫でてから、カイの方を向いた。

「期待させる言い方は君に良くないからね。ハッキリと言うよ。鎌を直す方法だけど。そんなものはない」

「――っ……!?」

 まさかのキッパリとした断言に、カイは言葉に詰まってしまう。だがさっきまで笑い狂っていた人物とは思えない程、今のエンバーに冗談は一切なかった。

「な、ないって何かひとつくらい方法はあるだろ!?」

「残念だけど、ないね」

「直すのが無理なら、代わりの鎌を用意してくれるでもいい!」

「それも、出来ないね」

「どうしてだよ!?」

「君は実際に ”授与(じゅよ)()“ を行ったんだから、分かるだろう? 君はどうやって、その鎌を授与されるに至った?」

 問われ、カイはハッとなる。その顔を見て、エンバーは理解したんだと分かった。

「そうだよね。死神としての使命と心得を、閻魔様から受け取ったはずだ。それと引き換えに魂をもらった。その魂をボクのところに持ってきて、願い、君だけの鎌が誕生したはずだ。いいかい? つまりは、その鎌はその死神の魂そのもので、1本しか存在しない物なんだよ」