死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

「ピシ?」

 何の音?

 言い合っている中でも、すぐ近くで聞こえた音。
 お互い手を止め、顔を見合って訊き合う。

 と、次の瞬間。鎌の刃にヒビが入り、瞬く間にバキッと砕けてしまった。
 お互いが驚愕に目を見張って、放心としている間。無常に、ボロボロと破片が地面に落ちていく。

 立派だった鎌は見るも無惨に。目も当てられない、アイデンティティを失った悲しき姿に。

 もはや鎌だったとも分からなくなった物を見つめ――すぅと息を吸ってから、ふたり同時に叫んだ。

「ええええええええ!!?」

 まさかの展開に、嬉しさMAXだったテンションは、一気に焦りに変わる。

「ちょ、どう言うこと!? 鎌、壊れちゃったけど!? ねぇぇぇ!?」

「俺だって分かんねーよ! 壊れるなんて、聞いたことも見たこともねーよ!」

「何で!? じゃあこれはどう言うことなの!?」

「俺が聞きてーわ!!」

 ただの鉄の棒になってしまった柄を挟んで、パニックに言い合う。
 突如としてハッと冷静になった私は、あることを理解した。

「待って……。鎌が壊れちゃったってことは……。私、死ねないってこと!?」

 希望は一転して絶望に。感情は乱れに乱れる。
 さっきまで気色悪い程満面に笑っていたのに。今は一変して、うわーんと泣き出した。

「そんなの嫌! ……死なせてよぉ!!」

 死にたいのにぃ! なんて、道のど真ん中で、あらぬことを叫ぶ私を見る周囲の目は、冷視そのものだった。
 冷然に。冷淡に。まるで人ではないものを見るように見て、同情なく避けていく。

 情緒が不安定も不安定な私を見て、逆に平常心に戻れたんだろう。
 この場を取り囲む冷たい光景に、男ははぁーと深いため息を吐きながら、頭をガシガシと掻いた。

「くそっ」

 小さく苛立ちを呟いて、握っていた柄を消す。そして地面にへたり込む、私の腰を持ち上げた。

「ここから離れるぞ」

 ひょいと脇に抱えられたかと思えば、ふわっと空に浮いた感覚に襲われる。

「へ……?」

 抱えられた驚きと浮いた感覚に涙が止まり、今の状況に目を向ければ、間違いなく空を飛んでいた。