死神カイ君と死にたがりの花子ちゃん

 鎌が出現し、構えられるその動作を。片時も目を外さずに、うっとりした表情で見つめていた。
 まるでライブ会場で、大好きな推しのステージを泣きそうになりながら見守るように。

 あぁ……。本当に死ねる。
 私、やっと死ねるんだ……。

 死神なんて想像上の存在が、本当に実在していた驚きや、本当に死ねるの? なんて言う疑問は湧かなかった。
 これは嘘で、夢や幻かも知れないとも思わなかった。いや、目の前の光景があまりにリアルで、夢だとは思えなかった。

 男に冷たい空気が纏い、薄い唇が開かれる。

「スズキ ハナ。死は救済だ。受」

 それまで黙って、じっと見ていた私だったが、死ねると言う嬉しさにテンションが上がってしまった。
 せっかくの男の決めゼリフを遮り、鎌に飛び付いた。

「この鎌で斬られたら死ねるの!? キャー! 凄い! やっぱり死神にはこの鎌だよね~!」

「お、おい! 触るな!」

 目をキラキラと輝かせ、怖がる様子など全くなく。むしろ犬に構いに行くように、大きな刃を掴み、触る。

 突然の予想外過ぎる私の行動に、先程から男は腰を折られてばかり。調子を狂わされ、困惑ばかりで、決まっていた男前の顔は崩れてしまう。

「ねぇねぇ、はやくはやくっ!」

「だから触んなって言ってんだろ! 離れろ!」

 掴んで早く、離れろと、押して引っ張り、ギャーギャーとやり合う。

「アンタが掴んでたら、振れるもんも振れ――」

 振れねーだろうが! そう言おうとしたのを妨げたのは、不穏な音だった。


「ピシ」