#レモンフィルター

一年後。
因果律調整師を名乗る人物のもとに、新しいメッセージが届いた。


「助けてください。もう限界です」

「レモンフィルター、解除する方法はないんですか?」

「もう10回以上交換しました」

「どんどん容器の寿命が短くなっています」

「最初は二ヵ月だったのに、今は一週間しか持ちません」

「このままじゃ、私、消えちゃいます」


因果律調整師は、いつものように冷たく返信した。

「申し訳ありませんが、一度かけたフィルターは解除できません」

「あなたが選んだ道です」

「最後まで責任を持って、生き続けてください」

「ああ、そうそう。教えておきましょう」

「容器の寿命が一日になったとき、あなたは『先生』になります」

「次の犠牲者を探す、新しい因果律調整師に」

「おめでとうございます」


メッセージを送信し終えた因果律調整師は、立ち上がった。

鏡を見る。
そこに映っていたのは、見覚えのある顔だった。
いや、見覚えがあるはずなのに、思い出せない。
この顔は、誰の顔だっただろう?

もう覚えていない。
何百回も、何千回も交換を繰り返して。
もう、自分が誰だったのか、わからなくなった。
ただ、首筋の糸だけが、確かに存在している。

黄色い、レモンの香りのする糸が。

因果律調整師は笑った。