#レモンフィルター

果歩ちゃんが失踪してから、今日でちょうど二ヵ月。

私は口を開けようとした。
叫ぼうとした。助けを呼ぼうとした。

口から出てきたのは、声ではなかった。

黄色い糸が、口からダラリと垂れ下がった。
糸の先には、レモンの種が結ばれていた。

鏡の中の私は、果歩ちゃんの顔で、泣いていた。
涙は透明ではなかった。
レモン色の、酸っぱい匂いのする涙だった。


そして、私は理解した。
果歩ちゃんは、今頃どこかで私の顔で笑っている。
地味な服を着て、ノーメイクで、誰にも注目されずに。
私は果歩ちゃんの人生を生きなければならない。

二ヵ月だけ。

二ヵ月以内に、私も次の誰かを見つけなければならない。

私を羨んでいる誰かを。
綺麗になりたいと願っている誰かを。

そして、その誰かに私の容器を渡して、私は新しい容器をもらう。

永遠に、永遠に、この呪いは続いていく。