#レモンフィルター

画面を開く。

「ねえ、美月ちゃん。今の私の写真、盛れてた?」

私は画面を見つめた。
DMの送り主のプロフィール画像が、更新されていた。
そこには、私の顔が映っていた。

いや、違う。

それは「私の顔をした果歩ちゃん」だった。

地味な髪型。
ノーメイクの顔。
くたびれた制服。

その顔は幸せそうに笑っていた。
心から安心したような、穏やかな笑顔。

私は鏡をもう一度見た。

鏡の中の私は、ゆっくりと変わっていった。

目が大きくなる。
鼻が高くなる。
肌が白くなる。

モデルみたいに整った顔。
大きな瞳。
陶器のような白い肌。

果歩ちゃんの顔。

そして、首筋には、黄色い糸の縫い目がくっきりと浮かび上がっていた。

喉が渇く。
水を飲む。
首の縫い目から、水が漏れ出していく。
ポタポタと、床に水滴が落ちる。

スマホがまた震えた。

「ありがとう、美月ちゃん。これで私、やっと楽になれる」

「美月ちゃんは、私のこと、ずっと羨ましがってたよね?」

「よかった。美月ちゃんの夢、叶ったね」

「ひとつだけ、教えてあげる」

「このフィルター、永遠には持たないの」

「限界があるんだって」

「だから、美月ちゃんも、次の人を探さないとね」

「誰か、気楽そうな人。美月ちゃんみたいに、私を羨んでる人」

「先生が教えてくれたやり方、全部裏垢に書いといたから」

「ああ、そうだ。もう一つ教えてあげる」

「だいたい二ヵ月。二ヵ月経つと、糸がほどけ始める」

「体が崩れていく」

「だから、二ヵ月以内に次の人を見つけて、交換しないとダメだよ」

「頑張ってね、あたらしい果歩ちゃん♡」