孕みの濁-ハラミノダク-


    ◇

 幼馴染みの友咲と親しい仲になったのは五歳の頃からだと記憶している。親同士が仲が良くて、俺たちも自然とそうなった。

 その頃から友咲はとにかく無駄に元気で明るい奴だった。幼稚園ではずっと外で走り回って服を毎日のように汚していたし、小学校ではクラスの中心的存在でいつも輪の中心で楽しそうに笑っていた。
 対する俺は運動することも目立つことも嫌いで、室内で一人のんびり過ごすか勉強することを好んだ。小学校でもそれは変わらず、別に真面目だった訳じゃないが地味な奴と周りに思われていたようで、性格クズな同級生や上級生によく嫌な絡まれ方をされた。けどその度に友咲が止めに来るからイジメに発展することはなかった。
 友咲が俺を後ろに庇って相手とわあわあ口喧嘩しているのを、俺はいつも他人事のように眺めていた。

 小学校の卒業式を間近に控えたある日。
 いつものように二人で肩を並べて帰っていると、友咲から急に笑顔で言われた。

「中学生になっても俺が優雨のこと守ってやるから心配すんなよ」

 はあ? と不快に思った。守るってなんだよ、俺はひ弱じゃない。そう言い返そうとして出来ないことに気づいた。
 俺はずっと友咲に守ってもらっていた。友咲の背中の後ろで俺は何もしなかった……いや、出来なかったんだ。友咲が助けに来てくれるのを当たり前に思っていた。
 気づいた瞬間申し訳ない気持ちでいっぱいになった俺は、中学からは自分の身は自分で守れるようになろうと思い、親に頼んで空手と柔道を習わせてもらった。喧嘩が強ければ絡まれなくなるだろうという理由だったが、そのおかげで変質者から心ちゃんを、大学生四人組から友咲を守れた。
 喧嘩をふっかけてきた大学生から友咲を守れた時は嬉しかった。けど一回だけで満足はできない。友咲には数えきれないほど守ってもらったから。だから今後は、喧嘩以外でも俺にできることで友咲を守ろうと思った。

 ――優雨。

 友咲が俺を呼ぶその声に元気はない。
 またかと思いながら俺は「なんだよ」と素っ気なく返す。

 ――ごめんな。

 ああ、本当にらしくねぇな。
 また謝るのか。俺に迷惑をかけるなんて日常茶飯だろお前。ちょっと前まで一ミリも気にせずへらへら笑っていたくせに。
 謝罪なんて必要ない。「ありがとう」でいいんだ。全てが無事に終わったら、必ずあいつの口から感謝の言葉を言わせてやる。

 大丈夫だ。守れる。守ってみせる。
 絶対に、呪いから友咲を守ってみせる。


    ◇

 空き家の前に到着した頃には、辺りは真っ暗になっていた。
 荒れ放題の庭木の隙間から敷地内に入っていくと、目の前に空き家が現れた。初めて目にする外観をじっと眺める。なんて事はない、普通の家だ。窓などは一切割れておらず元の状態を綺麗に保っている。

「っ、う」

 隣にいた友咲が呻いたかと、腹に両腕を回して苦しそうに背中を丸めた。俺は慌てて友咲の体を支える。

「大丈夫か?」

「なん、とか……」

 絞り出した声は弱々しく、暗闇に見える顔は青ざめていた。額にはじんわりと汗が滲み出ている。
 友咲をこれ以上この先に進ませるのは良くない……そう判断して言った。

「友咲、お前はここまでだ」

「え?」

 友咲が目を見開いて俺を見る。

「後は俺がやるから、お前はここで待ってろ」

 友咲が何か言ってくる前にその両肩を掴んでぐっと押した。友咲は力なく地面に両膝をつく。
 俺は立ったまま友咲を見下ろして軽く微笑んで見せると、背中を向けて玄関に向かう。玄関に鍵はかかっていなかったと友咲から聞いているが、今はどうなっているかわからない。とりあえず確認しようと思いながら、ポケットからチュッパチャプスを取り出す。
 左手に持った飴の包装を剥がして口に咥えようとしたタイミングで、後ろから右腕をがしっと掴まれた。玄関扉を目の前にして足を止める。振り返ると、友咲が真剣な顔をして俺を見つめていた。

「ここに残るのはお前だ、優雨」

 ほとんど睨むような目だった。心底呆れた俺はため息をつく。

「アホか。そんな弱った体のお前に任せられるかよ。俺が行ってちゃちゃっと終わらせた方がいいに決まって、」

「駄目だ! この家の中に優雨は入るな!」

 首を振った友咲はぎゅっと眉を歪ませた。いまさら何を言い出すんだ。泣きそうになっているその顔を見てイラッとする。
 また何か言おうと開いた友咲の口に、片手に持っていた飴を突っ込み強制的に黙らせた。

「分かった、お前も来るのは止めねぇ。けど俺を置いて一人で行くのはナシだ」

「でも優雨、」

「これ以上ごちゃごちゃ言うなら殴って気絶させるぞテメェ」

 俺の腕を離して口から飴を出した友咲は叱られた犬みたいな顔をしていた。
 俺は苛立ちを長いため息で吐き出す。こんなところで時間を消費している場合じゃない。友咲が持っている飴を奪うように取って口に咥えながら背中を向ける。そして目の前にある玄関の引き戸に手をかけて躊躇なく開けた。
 じめっとした生ぬるい空気が肌を撫でた。スマホのライトをつけて真っ暗な玄関を照らしながら足を踏み入れる。俺の後ろに無言で続いた友咲もスマホのライトをつけた。
 二つの灯りを頼りに奥にある和室へ向かう。先ほどの言い合いのせいで、俺たちの間には気まずい空気が流れていた。

「……優雨」

 小さな声で名前を呼ばれた。ガリガリと飴を噛み、振り返らずに返事をする。

「なんだよ」

「聞こえないか」

「なにが」

「……いや、なんでもない」

 友咲には何か聞こえているようだ。でも俺には床をギシギシ踏み鳴らす音以外なにも聞こえてこない。

「はらみ、はらむ、はらみの……」

 後ろで何かぶつぶつ呟いている友咲が心配になるが、今は地下洞窟に続く穴を見つけるのが先だと自分に言い聞かせた。

 廊下の一番奥にあるドアを開けて中を照らす。友咲から事前に聞いていた通り、そこは二間続きの和室になっていた。
 この下のどこかに洞窟に降りられる穴があるらしい。一枚一枚畳を剥がしていく作業に取り掛かろうとして、どこからか土の匂いが空気に乗って流れてきた。
 不思議に思いながらスマホのライトを隣の和室に向けると、奥の畳が一枚だけ剥がされていることに気づく。
 俺はそこへ近付いて、マンホールの蓋よりも一回り大きい穴を見下ろした。穴の底に向かって長いロープが一本垂れ下がっている。地上に続くロープの先は部屋の隅にある柱にくくりつけられていた。

「誰かが先に向かったみたいだな」

「安希さんかも」

 友咲が俺の隣に立って穴を見下ろして言った。
 彼女もおそらく呪いを受けた被害者の一人で、俺たちのように呪いを解くための情報を集めていた。そして情報を手に入れ、呪物を壊しにいくために洞窟の先に向かったんだろう。

「行こう、優雨」

 友咲が言った。相変わらず表情は苦しそうだが、しっかりした声だった。様子がおかしかった友咲を心配していた俺は、内心ホッとしながら「ああ」と頷く。

 俺が先にロープを掴んで穴の中に入った。地上から友咲がスマホのライトで中を照らしてくれている。
 井戸の底に降りていくような感覚だった。穴はそんなに深くはなく、すぐに両足が硬い地面に着地する。
 ひんやりとして息が詰まるような狭い空間の中、俺はスマホのライトをすぐ真横に向けた。そこには人為的に掘られただろう奥へと続く一本道がある。天井は少し屈んでいける高さまであった。まるで防空壕のようだ。

 友咲も穴の底に降りて来ると、俺が先頭になって洞窟の奥へと進む。四方を囲む土壁は乾いているため泥で汚れる心配はなかった。ずっと奥まで続く狭い一本道が途中で左右に分かれる事態もなく、十分ほど歩き続けてやがてゴールが見えてくる。

 急に視界がぱっと明るくなったかと思うと、俺たちは広い空間に出ていた。ドーム状になった空間は体育館の半面ほどの広さがあり、青白い光に照らされた神秘的な雰囲気に包まれている。
 外の新鮮な空気が流れてきた。頭上を見ると、自然にできたような穴がぽっかりと開いている。地上の樹木が枝を伸ばした隙間から覗く月が、ちょうど穴の中央に位置しており、その月明かりが地下の空間を柔らかく照らしていた。

 空間の中央付近。そこに先客が二人いた。
 一人は地面に倒れている。安希さんだ。彼女のそばには懐中電灯と小ぶりな斧が落ちていた。
 彼女の横に佇んでいたもう一人の人物が、ゆっくりと体の向きを変えて俺たちと向き合う。その顔は見知った人物だった。

「やれやれ、まさか君たちまでここに来てしまうとは」

 沈着な声を響かせた『喫茶いながみ』の店主――稲上栄治は、驚いている俺たちに眉尻を下げた笑みを見せた。

 俺はこの状況に困惑する。安希さんに視線を向けた。彼女はぴくりとも動かない。まさか死んでいるのかと思ったその時、「大丈夫。彼女は生きているよ」と稲上さんが言った。
 視線を稲上さんに戻す。彼は相変わらず微笑んでいた。しかし笑っているのは口元だけだ。こちらを見つめる眼鏡の奥の瞳は氷のように冷たい。

「あなたがやったんですか?」

 俺は感情を殺して問いかけた。

「まさか。僕じゃないよ」

 稲上さんは困った顔になると、無害を証明するかのようにひょいっと両手を胸元まで上げた。そして地面にある斧に視線を落として説明をする。

「どうやら彼女はアレをこの斧で壊そうとして、結界のような力に弾き返されたようだ。打ちどころが悪かったのか気絶してしまった彼女を後から来た僕が発見した。どうしようかと悩んでいたところに、君たちが現れた」

「アレって……?」

 俺の隣で友咲が呟いた。
 稲上さんは小さく笑うと「ほらあそこに」と、片腕を上げて自身の背後を指差しながら俺たちに視線を投げる。
 洞窟奥の行き詰まり。月明かりがあまり届かず薄暗いそこに、人工物のようなものが見える。人工物は仏壇の造りに似た大きさの箱をしていた。
 目を凝らしてそれをよく見た俺は息を呑んだ。隣にいる友咲も気づき、緊張した声で俺を呼ぶ。

「優雨、あれ……」

「あぁ……」

 箱の中には茶色く干からびた人間のミイラが、正座をして頭を垂れた状態で収まっていた。
 色褪せてぼろぼろになった着物。骸骨のような頭部に髪の毛はなく、性別は全くわからない。

「まるで即身仏のようだね。あの人間は自らあの箱に収まり、そのまま飲まず食わずで衰弱死したのかな」

 この異様な状況下で、稲上さんは不自然なほど平然としていた。
 絶句する俺の耳に、友咲の震えた声が届く。

「中山栞さんだ」

「えっ……?」

「あのミイラから女の幽霊の声がしてるんだよ。空き家に入る前から微かに聞こえてたんだ。あの呪文のような言葉が。今もずっと、繰り返してる……」

 ミイラを見つめる友咲の横顔はひどく怯えていた。
 女の声? 呪文? そんなものは全く聞こえない。

「あのミイラはまるで生きているように見えるね。肉体は死んでも、魂は存在しているのかな」

 稲上さんはミイラを観察するように見つめながら言った。俺は怪訝に思う。コイツが敵か味方か分からない。

「君たちもアレに用があるの?」

 稲上さんと目が合う。俺は警戒しながらも冷静に答えた。

「そうです。僕たちは呪いを解くためにあの呪物を壊しに来たんです」

「へえ」

 今知った、と言わんばかりの表情だ。俺は眉をひそめる。

「あなたはなぜここに居るんですか?」

「うーん、話すと長くなるから今はやめとくよ。それより君の友達――」

 稲上さんの声を遮るように、友咲の悲鳴が響いた。

「! ぐッ、ぅ」

「友咲!?」

 しゃがみ込んだ友咲が両腕を腹に回して背中を丸める。痛い、痛い、と呻き、体を小刻みに痙攣させた。

「友咲っ、おい! しっかりしろ!」

「ゆ、ぅ」

 しゃがみ込んで友咲の両肩を掴む。ゆるゆると顔を上げた友咲は濁った瞳で俺を見た。

「ゆう、優雨、おれ――ッ、ゴホッ!」

 大きく咳をした友咲が地面に向かって吐血する。口元を真っ赤な血に染めた友咲を目の前にして、全身からさーっと血の気が引いた。

「優雨、ごめ、っ、」

「っ、」

「ご、めん、こんな、こと、まきこんで、ほんとに、ごめ……」

「友咲ッ!」

 両手で友咲の頬を挟んで無理矢理顔を上げさせた。友咲の濁った瞳をしっかりと見つめて、吐き出すように叫ぶ。

「いいか! お前は必ず俺が助ける! だから絶対に諦めるな、いいなッ!?」

 友咲はぐっと唇を噛み締めた。その瞳に溜まった涙が、今にもこぼれ落ちそうになる。
 友咲の腹部に視線を向けると、服に血が滲んでいた。

「くそッ」

 もう時間がない。
 俺は立ち上がって走った。向かう先の途中で斧を借りる。稲上さんは無言のまま突っ立っていた。一瞬見えた顔は無表情で、何を考えているのか全く読めなかった。
 斧を手にした俺は脇目も振らずに走る。持ち手をぎゅっと強く握りしめて、目標物に狙いを定めた。
 呪いを生み出す元凶である呪物のミイラに向かって、大きく腕を振りかぶる。頭から真っ二つにするイメージと勢いで、思いっきり振り下ろした――瞬間、見えない力に弾き飛ばされる。

「ッ、!」

 体が高く浮いて後方に飛ばされたと思ったら地面に強く叩きつけられた。二回三回と地面を転がってうつ伏せで止まったあと、痛みを噛み殺しながら両肘を地面に突いて体を起こす。手元にない斧を探すと、前方に見える呪物のそばに落ちていた。

「っ……」

 次いで呪物に目を向けた俺は息を呑む。ミイラの顔つきが変化していた。まるで般若のように恐ろしい怒りを露わにしている。
 あのミイラは、生きている――。

「大丈夫?」

 いつのまにか俺の隣に稲上さんが立っていた。
 見上げると、眉尻を下げた笑みを浮かべた稲上さんと目が合う。

「結界の力をどうにかしないと、アレを壊すのは不可能だよ」

「っ、どうにかって、」

 じゃあどうすればいいんだ。
 ぎり、と血が滲むほど唇を噛み締める。方法を探す時間はない。少し離れた先にいる友咲が地面に倒れ込んで苦しそうにしている姿が見えて、心臓が止まりそうになった。
 助けられないのか――?
 その絶望感で、視界が真っ黒に塗り潰される。

「いや。どうにかなる方法が一つだけあるよ」

「……え?」

 急な台詞に困惑しながら稲上さんに視線を戻す。稲上さんは少しも表情を変えずに俺を見下ろし、この場にそぐわないことを口にした。

「その代わり、うちでバイトしてくれないかな」

「……は?」

「お店の知名度も上がって一人じゃ手が回らなくなってきたから募集しようと思っていたんだ。あ、ちゃんとお給料は払うから安心して」

 ふざけてるのかと怒りを感じ、この余裕はどこからきているんだと疑問に思う。普段の俺なら相手の底を探る。だが今はそんな余裕なんてない。
 どうにかなる方法が一つだけある。
 その一言に、自分は縋った。

「わかりました。僕のことは好きに使ってください。だからあいつを、友咲を」

 助けてください――。

「決まりだね」

 稲上さんはにっこり笑うと、俺から視線を逸らし前を向く。そして呪物を一睨みして言った。

「アレは僕が壊そう」


    ◇

 普段あまり利用しないバスに一人で乗っていた。車窓に目を向けると外は真っ暗だ。窓ガラスには思い詰めた顔をした俺自身が映っている。

 小瀬川先輩との通話を終えたあとも、あき姉からの連絡を自室で待っていた。言いようのない不安だけが募る中、夕方になり、外が薄暗くなり始めてくると、いよいよ我慢ができなくなった俺は、あき姉の家のインターフォンを鳴らしていた。出てきたあき姉の母親は、切羽詰まったような様子だった。

「湊斗君、ちょうど良かったわ。今あなたのところへ行こうか悩んでいたのよ」

 母親が一通の封筒を持っていることに気づく。嫌な予感がした。

「なにかあったんですか?」

「ついさっき安希の部屋に行ったら、この手紙が机の上に置いてあったの……」

 差し出された封筒には『お父さん、お母さんへ』と、あき姉の字で書いてあった。

「手紙を読んだら、お別れをするような文章が書いてあったのよ……。あの子、スマホも机の上に置いて出て行ってるの。湊斗君、安希の居場所を知らない?」

「……いえ。でも、友達と会う約束があるって言ってました。誰なのかは、わからないです」

「そう……じゃあ高校の時の友達に連絡してみるわね。それでも居場所がわからなかったら警察に相談して……」

 母親の声は途中から聞こえていなかった。俯いた俺はぎゅっと拳を握る。数時間前まで部屋にいたあき姉を思い出す。普段と様子が違うことに気づいていながら、あき姉の悩みを聞けなかったという後悔が押し寄せる。
 あき姉はどこにいる?
 そう思った瞬間、空き家のことを思い出した。

「俺も探してみます」

 駅に向かって走った。空き家だ。そこにあき姉がいるとは限らないけど、とにかく行って確かめるしかないと思った。


 そして今、停留所に停まった最終バスから降りた俺は、照明灯が少ない歩道を、父さんから聞いていた情報を元に空き家を目指して進む。県道沿いをずっと真っ直ぐ行くと、庭木に囲まれた一軒家が見えてきた。
 すぐそばまで近づいて立ち止まる。目の前に立ちはだかる壁のような庭木を見つめて、いまさら悩んだ。勢いのままここまで来てしまったけど、あき姉はこの中に居るんだろうか。

 ザアァァ……

 すぐ近くに広がる森が風の影響で不気味な音を鳴らす。無意識に森へ目を向けたその時――ぎゅっと、右手を誰かに握られた。

「……!」

 出かかった声を呑み込んで下を向くと、すぐ隣に小学生くらいの小さな女の子が立っていた。
 おかっぱ頭に古い着物姿だ。俺を見上げるその顔は死人のように青白い。女の子は俺の手を握ったまま狐のような目でじっと見つめてくる。緊張で体が動かず、視線すら逸らせないでいると、突然、女の子の血色のない唇が動いた。

「あそこにいるよ」

 女の子は前を向いた。俺もつられて前を向く。二人揃って目の前の空き家を見つめる。

「あそこにみんないるよ。行こ」

 女の子は困惑する俺の手を引いた。