ヤンキー君は委員長を落としたい

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「玲央。珍しく早いな。どうしたんだ?」
廊下を歩いていると、後ろから優里に呼び止められた。
「生徒会室に行ってた」
「委員長に呼び出されたのか?」
優里は不思議そうな顔で俺を覗き込む。
「ちげぇよ。
俺が委員長に会いに行ったんだよ」
きっぱりと言い切る。
「は?なんでだよ」
「委員長を落とすためだよ」
――言った瞬間、俺は思考が止まった。
やべぇ。
俺、今とんでもないこと口走ったか?
頭の中が委員長のことでいっぱいだったせいで、
何の抵抗もなく本音をそのまま喋ってしまった。
本来なら絶対誰にも言わねぇのに。
「もしかしてお前……委員長のこと好きだったのか!?」
優里の声は、やたらデカかった。
廊下中に響くレベルで。
その瞬間、俺は完全に我に返って
否定しようと口を開いた、その時――
「玲央って委員長のこと好きなのー!?」
近くにいた女子が、優里以上の大声で叫んだ。
その一言をきっかけに、
周りの女子たちが一斉に反応する。
「え!?マジで!?」
「委員長なんかに負けるなんてー!」
「いつから好きなんですか!?」
「私の方が好きなのに!」
「秋雨琴子の野郎許さん!!」
ピーピーギャーギャー、
一瞬で周囲が大騒ぎになった。
「おい!テメェらどけ!!
俺は委員長なんか好きじゃねぇよ!!」
俺が全力で否定すると、
「なーんだ!」
「やっぱりそうよね!」
「玲央ー、今日遊ぼうー!」
さっきまでの騒ぎが嘘みたいに、
今度は別の意味で女子が一斉に群がってくる。
……はぁ。
俺は心の底から思った。
もう二度と、
誤解されるようなことは口にしない。
そして――
朝早く登校して生徒会室に突撃するのも、
絶対にやめようと固く誓った。
少なくとも、今日はもう無理だ。