前世あやかし狐だった私は、恋人だった晴明様を思い出せない

 放課後、ミス研の部屋に来た私と玲奈は、門田さんの話をしていた。正直なところ、警察が出てきてしまっては私達に出来ることは何もない。

 以前に大学で事件が起きた時、先に事件を解決したのが気にくわなかったのか、埼玉県警の刑事からは嫌みを言われたし、また刑事と鉢合わせになって、何か言われるのはごめんだった。

「はぁ……」

 二人で同時に溜め息をつき、顔を見合せて思わず笑い合う。そんな時、ドアをノックする音が聞こえた。

「あ!」

「え?」

 部屋の中へ入ってきた人物を見て、固まってしまった私を玲奈は不思議そうに見ていた。

「……もしかして、結愛の彼氏?」

「か、彼氏?! 違うわよ。この間、見学に来た人。どうしたら、そんな考えに辿り着くのよ」

「ミステリー研究会の見学?」

「作戦会議をしてるのか? 何の?」

 この間、研究室へ来ていた背の高い茶髪男は、ノートを覗き込んで内容を読もうとしていた。

「近っ――教えないわよ。守秘義務ってやつ。いくら何でも、それくらい知ってるでしょ?」

 近づいてきた彼に、ノートを見られないように必死に守っていると、彼は平然と言った。

「俺も、ミス研に入りたい」

「名前は?」

「野上 大介」

 こんなに端整なルックスなら、一度くらいは女子生徒の噂されるだろう──いや、噂にならない方がおかしいのだ。噂話に詳しい玲奈だって知らなかったくらいなんだから。

「俺、編入生だから。実は知り合いがほとんどいないんだ。よろしく頼む」

 彼は、そう言って手を差し出してきた──この流れで握手? そう思いながらも、手を差し出した。握手をすると、手に力を入れられ引き寄せられる。

「この事件、キツネに(そそのか)されたんだよ」

 耳元で囁かれて恥ずかしかった私は、思わず叫んでいた。

「ちょっと、耳元で話しかけないでよ!」

 玲奈は何を勘違いしたのか、私達のことを生温かい目で見ていた。

「そうだ! 私、先生から書類仕事を頼まれていたんだった」

 そう言うと、玲奈はわざとらしい態度で部屋を出ていった。いらない気を使ったのだろう。

「はぁ」

「キツネがー」

「あー、はい、はい。分かった。キツネね。キツネがいたのね」

「違う。何も分かっていないんだな」

「何が?」

 話の途中で研究室のドアをノックする音が聞こえた。

「あれ? 桜田と──田代は、いないんだな。桜田の知り合いか?」

 見れば、オカルト研究会の部長、上川健(かみかわたける)先輩が屋上から戻って来ていた。

「うそ! もうそんな時間ですか?」

 部屋にある時計の針は、午後六時を指していた。この部屋はオカルト研究部――通称オカ研と合同で使っているため、使用するには申請が必要だった。