事件から一ヶ月が過ぎ、もうすぐ夏休みだった。
初夏なのに陽射しは強く、日差しを避けるために裏道から教室へ向かうと、教室の前で野上君にばったり出会った。
「結愛も、この授業受けるの?」
野上君が、不思議そうな顔で教室の前に立っていた。
「そうよ」
「今まで見かけなかったけど、結愛も受けてたんだな」
今まで休んでたから、野上君と一緒に授業を受けるのは初めてかもしれない――そのことに気がついた私は、何となく曖昧に笑った。
「それより、席に着こう。暑くて移動だけで、疲れちゃったわ」
「そうだな」
入口で立ち話をしていると、教室で私達を見ている女子達の視線が気になった。野上君のファンだろうか……。そんな事を考えていると、教室を出ようとした人とぶつかりそうになった。
「やっぱり、お前か。安倍晴明」
その言葉に振り返ると、私がぶつかりそうになった人は野上君と睨み合っていた。
「お前は──賀茂光栄?」
「正解だ。相変わらず、遠くにいても分かりやすい奴だね」
こちらを見ている男性は、不のオーラを放っていた。何だか良くない感じがする。
「妖狐、お前も転生していたのか。晴明の人間嫌いは、少しは直ったか?」
嘲るように笑った彼に危険を感じたのか、野上君が私を庇うように一歩前へ出た。
「こいつは、関係ない。妖狐だった頃の記憶はないんだ」
「そうか」
「何か用なのか?」
「安倍晴明」
「野上だ。野上大介」
「野上――千年前の恨み、晴らさせてもらう」
そう言い捨てると、こちらを睨んでいた男性は教室を出て行った。
「野上君、授業が始まるわ」
私達は急いで後ろの席へ着いたが、まだ先生が来ていなかったので、小声でさっきの男性の事を聞いてみた。
「野上君。さっきの人、知ってるの?」
「ああ。前世で俺の師匠の──孫だった人なんだ。何回か一緒に仕事をしたけど、問題なかったはず。何だってあんなこと……。訳が分からないよ」
野上君が分からないのであれば、私には余計に分からないだろう。
「さっきの、賀茂光栄さんだっけ? 本人で合ってるの? 転生してるんだったら、誰かと間違えてるんじゃない?」
「いや、それはない。あの面差し、間違えようがないよ。前世とそっくりなんだ。だけど、オーラがおかしかった。何というか、おどろおどろしいというか……」
野上君は、言いづらそうに話をしていた。再会した途端、憎まれ口を叩かれて恨みを買ってるなんて、いい気はしないだろう――なんて声を掛けてあげればいいのか悩んでいるうちに、先生がやって来て授業が始まったのだった。
初夏なのに陽射しは強く、日差しを避けるために裏道から教室へ向かうと、教室の前で野上君にばったり出会った。
「結愛も、この授業受けるの?」
野上君が、不思議そうな顔で教室の前に立っていた。
「そうよ」
「今まで見かけなかったけど、結愛も受けてたんだな」
今まで休んでたから、野上君と一緒に授業を受けるのは初めてかもしれない――そのことに気がついた私は、何となく曖昧に笑った。
「それより、席に着こう。暑くて移動だけで、疲れちゃったわ」
「そうだな」
入口で立ち話をしていると、教室で私達を見ている女子達の視線が気になった。野上君のファンだろうか……。そんな事を考えていると、教室を出ようとした人とぶつかりそうになった。
「やっぱり、お前か。安倍晴明」
その言葉に振り返ると、私がぶつかりそうになった人は野上君と睨み合っていた。
「お前は──賀茂光栄?」
「正解だ。相変わらず、遠くにいても分かりやすい奴だね」
こちらを見ている男性は、不のオーラを放っていた。何だか良くない感じがする。
「妖狐、お前も転生していたのか。晴明の人間嫌いは、少しは直ったか?」
嘲るように笑った彼に危険を感じたのか、野上君が私を庇うように一歩前へ出た。
「こいつは、関係ない。妖狐だった頃の記憶はないんだ」
「そうか」
「何か用なのか?」
「安倍晴明」
「野上だ。野上大介」
「野上――千年前の恨み、晴らさせてもらう」
そう言い捨てると、こちらを睨んでいた男性は教室を出て行った。
「野上君、授業が始まるわ」
私達は急いで後ろの席へ着いたが、まだ先生が来ていなかったので、小声でさっきの男性の事を聞いてみた。
「野上君。さっきの人、知ってるの?」
「ああ。前世で俺の師匠の──孫だった人なんだ。何回か一緒に仕事をしたけど、問題なかったはず。何だってあんなこと……。訳が分からないよ」
野上君が分からないのであれば、私には余計に分からないだろう。
「さっきの、賀茂光栄さんだっけ? 本人で合ってるの? 転生してるんだったら、誰かと間違えてるんじゃない?」
「いや、それはない。あの面差し、間違えようがないよ。前世とそっくりなんだ。だけど、オーラがおかしかった。何というか、おどろおどろしいというか……」
野上君は、言いづらそうに話をしていた。再会した途端、憎まれ口を叩かれて恨みを買ってるなんて、いい気はしないだろう――なんて声を掛けてあげればいいのか悩んでいるうちに、先生がやって来て授業が始まったのだった。

