前世あやかし狐だった私は、恋人だった晴明様を思い出せない

「野上君、空き地に何があるの?」

「さあ? 分からない。でも良くない霊気は感じる──急ごう」

  私と野上君が走って空き地まで行くと、空き地の真ん中で上川先輩と門田さんが睨み合って立っていた。

「あなたが、優希を殺したんでしょう?」

「殺しただなんて、人聞きの悪い。彼は天の裁きを受けただけだ」

「嘘よ! 刑事さんが、抵抗した跡があるって言ってたわ」

「やっぱり死ぬのが怖くなったんだろう。気の小さいやつだ。なかなか決心がつかないみたいだったから、俺がやってやった」

 二人は私達に気がついていないのか、睨み合っていた。

「優希は何の罪も犯してなかった。そんな優希を殺した、お前も死ね! そしたら真相を暴露した後に、私も後を追う」

 門田さんの目は血走っていた。それを聞いた上川先輩は、青ざめている。門田さんは鞄から包丁を取り出すと、意を決したような顔をしていた。

「ま、待ってくれ。死にたいと言ったのは、あいつなんだぞ。死にきれなかったから、殺して欲しいってSNSに書き込みがあったんだ。親切心だよ、分かるだろ?」

「そんなの、分かりたくもないわ。それに、あなたは優希に麻薬売人の罪を着せようとした……。最低な人間よ」

 そう言った門田さんは般若のような顔つきで包丁を振りかざし、上川先輩めがけて突進していった。

「うああぁぁ……」

 私が門田さんを止めようとすると、野上君が私の前に立ちはだかり、空中に五芒星(ごぼうせい)を描き、門田さんめがけて(ふだ)を投げつけた。

 ――パリン……

 ガラスの破壊音のような音が幾重にも重なって聞こえた後、門田さんは倒れていた。そっと近づいて様子をみてみたが、気を失っているだけのようだ。

「ひぃっ……」

 上川先輩は腰が抜けたのか、その場にへたりこんでいた。一方、野上君の額には大粒の汗が光っていた。

「大丈夫?」

「ああ。悪霊の妖は失せたよ」

「そうじゃなくて! 野上君は大丈夫なのって聞いたの。本当にびっくりしたんだから」

 私は安心したのか、いつの間にか泣いていた。

「結愛、驚かせてごめん。でも、今世は必ず守ってみせるから……」

 野上君はそう言うと、私の頭を撫でていた。

(……なんだか小動物を撫でてるみたいな撫で方ね)

「どうしたんだ? 一体、何があったんだ?」

 帰りが遅い私達を心配して見に来た青木刑事が、空き地の様子を見て呆気にとられていた。