前世あやかし狐だった私は、恋人だった晴明様を思い出せない

 

 門田さんに田辺さんのおばあさんの話を聞こうと思って大学内を探していたが、結局は見つからなかった。ランチをするために大学のカフェテリアへ向かったが、カフェテリアに入る直前に背広を来た男性の二人組に道を塞がれてしまう。

「失礼ですが、桜田さんでしょうか?」

「そうですが、何かご用でしょうか?」

 私を見た男性二人は顔を見合わせた。目の前には、細身の背の高い男性と小太りの背の低い男性が立っている。

「田辺優希さん、ご存知ですよね?」

 そう聞いてきたのは、背の低い男性の方だった。聞き方が敬語なのにヤクザみたいな感じは、まるで刑事ドラマに出てくる刑事みたいだった。

「あの……」

「失礼。私は、警視庁捜査1課の青木と言います。事件の事について、お伺いしたいのですが少々よろしいでしょうか?」

「え、ええ」

 私が歯切れの悪い返事をすると、青木刑事は手帳を取り出し姿勢を正した。

「早速ですが、田辺さんが亡くなったことはご存知ですか?」

「はい。もともと門田さんという方に、行方が分からないので探して欲しいと頼まれていたんです」

「それで、探して田辺さんの行方は、分かったのですか?」

 値踏みするような聞き方に嫌悪感を覚えたが、気にせずに答えた。

「いえ、その――門田さんから、急に探すのをやめて欲しいという連絡があったんです。だから、気にはなったのですが……」

「なるほど。その門田さんは、今どちらにいるか、ご存知ありませんか?」

「分かりません。私も探してるのですが……」

「最後に、4月20日の月曜日の夕方、あなたは何処で何をしていましたか?」

(まさか、アリバイ確認? いや、犯人じゃないし! それに、そんな前のことを覚えてる訳がない)

「もしかして、アリバイ確認ですか?」

「形式的なものです。皆さんにお伺いしております」

「……私達が探していた時には、田辺さんは、もう亡くなっていたんですね」

「……」

 私は手帳を取り出すと、4月20日月曜日の予定を確認した。

「ええと――4月20日は大学に来た後、ミステリー研究会の研究室に顔を出しています。かなり前のことなので、はっきりとは覚えていないのですが……」

「ご協力感謝いたします」

 青木刑事は、一礼すると後ろに控えている背の高い刑事と合流していた。青木刑事は『駄目だった』とでもいうように、背の高い刑事と話しながら、首を横に振っていた。

 また何か聞かれるのも面倒だなと思い、私はカフェテリアを諦めてその場を立ち去ったのだった。