その週の土曜日。私達は田辺さんが見つかったという、自宅の近くにある空き地へ来ていた。昔は公園として使われていたが、近所に別の公園が出来て、それ以降は使われていなかったらしい。普段は、あまり人が踏みいることの無い場所なのか、雑草で地面が見えないほど公園は荒れていた。
ここへ来る途中、喫茶レーベルに寄って話を聞いたが、田辺さんは空き地にある木で首吊り自殺をしたらしい。けれど、警察は自殺と事件の両面から調べているらしい。
現場保存の為なのか、空き地の前には、まだ警察官が立っていた。空き地の入り口で手を合わせていると、どういう訳か警官がこちらを睨むように見ていた──いたたまれなくなった私達はその場を逃げるようにして離れ、すぐ近くにある田辺さんの家へ向かった。
「結愛……」
玲奈が私の背中をそっと押した。私が田辺さんの家の前で、ずっと立ち止まっていたからだろう。すると、何もしてないのに目の前にある引き戸が開いた。
「お嬢さんたち、どうぞおあがりください。優希のためにも、線香を上げていってくださいな」
中から出てきた田辺さんのおばあさんは、もともと背が低かったが、さらに一回り小さくなったように見えた。
「おばあさん、ごめんなさい。私……」
「いいからいいから、お上がんなさい」
おばあさんに促されて、私達は中へ入った。お葬式と告別式は身内だけで終わったらしく、小さな居間へ案内された。
一人ずつ仏壇に手を合わせると、私達はソファーへ座った。おばあさんは居間へ戻ってくると、缶ジュースを手渡してくれた。
「今は、こんなものしかなくってねぇ、ごめんね」
お香典の蝋燭を手渡し、お悔やみを言うと、おばあさんは小さなため息をついて椅子へ腰掛けた。
「どうして、こんなことになってしまったんだろうねぇ」
おばあさんのその一言は、率直な思いだったのだろう。
「警察の方が、こちらへ来て家宅捜索したと聞きました……。お力になれず、申し訳ありません」
私が頭を下げると、玲奈と野上君も一緒になって、頭を下げてくれた。
「よしてちょうだい。顔を上げて。私は十分助けられましたよ。優希を探してくれている人がいるって聞いて、私がどれだけ勇気づけられたことか。あなた達には分からないでしょうけれど、優希は良い子でしたよ。なのに警察は、麻薬の常習犯だと決めつけて、優希の部屋を荒らすだけ荒らして帰って行ったんです」
「もしかして、探すだけ探して見つからなかったのですか?」
「当たり前でしょう。優希が、そんな事をするはずがありません」
「?!」
私達三人は顔を見合わせた。
「あの、門田さんから何か聞いてませんか?」
「美愛ちゃんから? いいえ、何も」
門田さんは手紙のことを、おばあさんに言っていないのだろうか? だとしたら、私達が余計な事を言うのは不味いかもしれない。
「ごめんなさい。門田さんから聞いていないのであれば、私から詳しくお話することは出来ません。確信が持てないから、話さなかった可能性もあります。今度、会ったときに聞いてみてください」
そう言って、この間来た時に借りた傘を返し、家を出たのだった。
「門田さんは、なぜ手紙のことをおばあさんに言わなかったのかしら?」
私がそう言うと、野上君は首を傾げていた。
「さあ……。心配をかけたくなかったんじゃないか?」
「そうかしら?」
すると、野上君が不吉な事を言った。
「今回の事件で狐に唆された人物は、おそらく二人いるな」
私は額に手を当てて俯いた。そんな様子を見ていた玲奈は、私達の話があまり聞こえなかったのか、私に見当違いの質問をしてきた。
「結愛、犯人が分かったの?」
「玲奈、今回の犯人逮捕は難しいと思うわ」
ため息をつきながら言った私の言葉に、玲奈は首を傾げたのだった。
ここへ来る途中、喫茶レーベルに寄って話を聞いたが、田辺さんは空き地にある木で首吊り自殺をしたらしい。けれど、警察は自殺と事件の両面から調べているらしい。
現場保存の為なのか、空き地の前には、まだ警察官が立っていた。空き地の入り口で手を合わせていると、どういう訳か警官がこちらを睨むように見ていた──いたたまれなくなった私達はその場を逃げるようにして離れ、すぐ近くにある田辺さんの家へ向かった。
「結愛……」
玲奈が私の背中をそっと押した。私が田辺さんの家の前で、ずっと立ち止まっていたからだろう。すると、何もしてないのに目の前にある引き戸が開いた。
「お嬢さんたち、どうぞおあがりください。優希のためにも、線香を上げていってくださいな」
中から出てきた田辺さんのおばあさんは、もともと背が低かったが、さらに一回り小さくなったように見えた。
「おばあさん、ごめんなさい。私……」
「いいからいいから、お上がんなさい」
おばあさんに促されて、私達は中へ入った。お葬式と告別式は身内だけで終わったらしく、小さな居間へ案内された。
一人ずつ仏壇に手を合わせると、私達はソファーへ座った。おばあさんは居間へ戻ってくると、缶ジュースを手渡してくれた。
「今は、こんなものしかなくってねぇ、ごめんね」
お香典の蝋燭を手渡し、お悔やみを言うと、おばあさんは小さなため息をついて椅子へ腰掛けた。
「どうして、こんなことになってしまったんだろうねぇ」
おばあさんのその一言は、率直な思いだったのだろう。
「警察の方が、こちらへ来て家宅捜索したと聞きました……。お力になれず、申し訳ありません」
私が頭を下げると、玲奈と野上君も一緒になって、頭を下げてくれた。
「よしてちょうだい。顔を上げて。私は十分助けられましたよ。優希を探してくれている人がいるって聞いて、私がどれだけ勇気づけられたことか。あなた達には分からないでしょうけれど、優希は良い子でしたよ。なのに警察は、麻薬の常習犯だと決めつけて、優希の部屋を荒らすだけ荒らして帰って行ったんです」
「もしかして、探すだけ探して見つからなかったのですか?」
「当たり前でしょう。優希が、そんな事をするはずがありません」
「?!」
私達三人は顔を見合わせた。
「あの、門田さんから何か聞いてませんか?」
「美愛ちゃんから? いいえ、何も」
門田さんは手紙のことを、おばあさんに言っていないのだろうか? だとしたら、私達が余計な事を言うのは不味いかもしれない。
「ごめんなさい。門田さんから聞いていないのであれば、私から詳しくお話することは出来ません。確信が持てないから、話さなかった可能性もあります。今度、会ったときに聞いてみてください」
そう言って、この間来た時に借りた傘を返し、家を出たのだった。
「門田さんは、なぜ手紙のことをおばあさんに言わなかったのかしら?」
私がそう言うと、野上君は首を傾げていた。
「さあ……。心配をかけたくなかったんじゃないか?」
「そうかしら?」
すると、野上君が不吉な事を言った。
「今回の事件で狐に唆された人物は、おそらく二人いるな」
私は額に手を当てて俯いた。そんな様子を見ていた玲奈は、私達の話があまり聞こえなかったのか、私に見当違いの質問をしてきた。
「結愛、犯人が分かったの?」
「玲奈、今回の犯人逮捕は難しいと思うわ」
ため息をつきながら言った私の言葉に、玲奈は首を傾げたのだった。

