前世あやかし狐だった私は、恋人だった晴明様を思い出せない

「結愛、講義は?」

「今日は休講だったの」

「そっか」

「この間、門田さんは『捜索しなくていい』って言ってなかった? 『警察が家宅捜索するから、罪から逃げられない』とも言ってたわよね?」

「田辺さんに会ったことがないから、どういう人物か分からないんだけど、やっぱり麻薬と気づかずに運び屋をやっていた。っていう話には無理があると思うの。周りの人の人物像を聞く限り『いい儲け話がある』って言われて話に乗る──そんな間抜けな事をするような人には思えないわ。だから私は何かから逃れる為に、嘘をついたと思ってたの」

「何の為に?」

「さあ? 例えば、密会の現場を見てしまって、口封じの為に殺されそうになって、逃げ回っていたとか。手紙まで書いて嘘を吐いたとは思えないわ」

「なぜ手紙で書いたのかしら? メールだと証拠が残ってしまうから? でも、それは手紙も同じよね。見せてもらったけど、パソコンで打ったものっぽかったし」

「パソコンで打った手紙? ますます訳が分からないわ。まるで、捜査を撹乱する為にやったとしか思えないわ」

「撹乱?」

「田辺さんが殺されて、遺体が見つからないのをいいことに真犯人が捜査を撹乱したって方が、しっくり来るかも」

 私がそう言うと、玲奈が目を丸くして私に聞いてきた。

「結愛、もしかして犯人が分かったの?」

「まさか。情報量が少なすぎて──どうにもならないわ。もし、田辺さんが自殺でなかった場合、いつ殺されたかにもよるけど、門田さんの鞄に手紙を入れられる人物には限られてくると思うの」

 そうなれば、大学のごく近しい人が殺人にかかわったことになる。

「え?」

「殺人と決まった訳でもないしね」

「結愛、遺体が見つかったのは田辺さんの実家の近くみたいなんだけど、行ってみる?」

「そうね。警察もいるでしょうし、今すぐって訳にはいかないけど……」

 なんとなく、あの場所へ出掛けるのは気が重たかったが、一度行ってみる必要があると思っていた。

「今度の土曜日に行ってみようか」

 私がそう言うと、玲奈だけでなく野上君も頷いていたのだった。