夢で出てきた変なババアを調べてみた結果

 神社の敷地内から刀剣が出て来たという記事は、ほんの数行の小さなものだった。
 きっと、ほとんどの人が見落とすレベルの文化欄の記事だ。
 改装中の神社の敷地内で、工事業者が見つけたのが、古い時代の刀剣だったという話だ。
 錆びた刀身の写真が写っている。
 時代劇よく見る刀とは違う真っ直ぐな刀身は、錆びていたけれども、私が夢で見た剣と形がそっくりだった。
 新聞の解説によれば、それは山伏の剣だそうだ。
 この神社では、山伏の儀式で神社に埋める習慣があったのだと記事には書かれている。
 残念ながら刀剣を埋める理由は記事では分からなかった。
 老婆とその山伏の刀剣が関連しているのかも分からなかった。
 
 だが、きっと、何か関係している。
 私は、確信して、インターネットで検索してみた。
 『山伏』『埋める』『神社』この三つのワードを入力して出てくる記事を読んでみる。

 一つは、山伏が村を訪れて「御幣を埋めて、社を建てて祀れ」と命じた話。
 一つは、山伏を生き埋めにしてしまった話。
 道を聞いてきた山伏が無礼であると憤慨して惨殺して谷に埋めてしまった。
 その後、惨殺したことを後悔し山伏を埋葬した場所を発掘し、山伏の頭蓋骨を氏神として祀った話。
 
 面白い話ではあるけれども、私の知りたいこととは違う。
 どうも検索ワードを間違えたようだ。

 『神社』『埋める』『刀剣』『風習』『山伏』……

 私は、狂ったようにインターネットで検索を始めた。
 思いつく限りのワードを入れて検索してみたが、思ったような成果は上がらないかった。
 駄目だ。
 どうしたらいいのだろう。
 新聞記事で刀剣と神社の話を見たのに、それを次になかなか繋げられなかった。

 今度は、ちょっとオカルトを離れて山伏というものについて重点的に調べてみた。
 山伏が刀剣を土に埋める風習は、確かにあるらしい。
 目的は、神仏への奉納、魔よけ、厄払いなど様々だ。
 山伏は、山中で修行する者。
 そのために、剣を埋めて修行の場を清めたり、土地の力を強めるのに、武器である剣を埋める場合がある。
 厄疫を鎮める、神仏への奉納、魔よけ、厄払いなど目的は様々だ。
 山伏国広なんて名刀の名前も出て来た。
 不動明王と梵字、「武運長久」と刻まれた国広作の太刀だ。
 名工の堀川国弘が山伏の修行をしていた時に作ったとされる名刀だったが、刀の形は、私が夢で見たものとは明らかに違った。
 
 山伏の修行についても調べてみた。
 山や自然の力を『うけたもう』て、自然の霊力を感じることで、生きながらにして『生まれ変わる』のが修行だそうだ。
 山を巡り御堂で勤行し精神を研ぎ澄ませることで、より深く自然の力を感じられるのだそうだ。
 山伏が白い衣を着るのは、産まれたての赤子の産着を白にするように、穢れのない清めの生まれ変わりの装束としての白装束だからだった。
 役小角は、修験道の開祖。いわば山伏の開祖ともいえると思うが、前鬼と後鬼と呼ばれる二匹の鬼を弟子として空も飛んだというのには、驚きだ。
 調べれば調べるほど、山伏のことは面白い。
 どうやら日本という国は、平地では国を作ったり都や田畑を作って私達が学校の授業で学ぶ歴史が繰り広げられていた裏で、山では独特な文化が育まれていたようだ。
 山伏だけではない。『サンガ』と呼ばれる山の民族、山中に集落を作る猟師。
 山の文化は独特で、調べれば調べるほど、面白くて興味惹かれる。

 私が夢を見た地域も、確かにその山岳文化の一端を担い、山伏が活動してたとの情報も得られた。
 申し訳ないが、ここでは詳しい場所は勘弁してもらいたい。
 地元の人に迷惑が掛かるのは、不本意なことだから。