ゆめこちゃんと遊んだ日

タイトル:
『ゆめこちゃんって女の子がいたんだけど』

投稿者:
花音

投稿日:
2026/01/01

 正月一発目からスンマセン。正直なんていうか、愚痴です愚痴。せっかく楽しいお正月だってのに、なんかこうみんなピリピリしてて嫌なかんじなもんだから。
 よくわかんないけどうちの妹のせいなのかもだし。マジ何がどうなってんだかってね。

 年末年始は、ばーちゃんちに帰るのがうちの家族のルールだった。あたしは中二だし、まだ受験生じゃないから絶対一緒に来いよって言われた。来年は受験生だから里帰りできないかもしんないってんで。
 まあ毎年のことだから諦めてるけど、あたしとしては正直めんどくさかったのが本音。
 ばーちゃんとじーちゃんに会うのは嫌じゃないし、お正月はいいんだけど……年末に帰るとさあ、手伝わされんのよ、大掃除。
 確かにばーちゃんたちはいい年だし、親戚みんなで掃除しないと回らないのかもしんない。いや、理屈はわかるけど、ばーちゃん家の近くに住んでる親戚もいるわけ。あたし達一家は住んでるの神奈川だから、関西にあるその村に帰るだけで結構時間かかるし労力もかかるわけ。何で長い距離使ってどうにか親の実家に戻ってきたあたしらが、そんな大変な大掃除手伝わなきゃなんないのって思っちゃうんだよねえ。近くに住んでる親戚だけでやればいいじゃん。そんなでかい家でもないんだしさあ。

 ああ、説明忘れてたけど、あたしのばーちゃんの家はすんげー田舎の村にあります。加美町村ってとこ。もともとは神様が待つ町って書いて神待村だったらしいって聞いたことある。それがいつのまにか加美町村って字に変わったんだってさ。なんでかは知らんけど。
 どんだけ田舎かというと、駅まで超絶遠くて、しかもそこから出てるバスが一日二本しかないというレベル。親が上京してくんなかったらあたしらもそんな不便なところで暮らさなきゃいけなかったのかって思ったらちょっとぞっとするわ。

 えっと、どこまで話したっけ。あ、思い出した。そうだ、その年末の大掃除がめんどいって話だった。
 お正月から帰ればいいじゃんって言ったけど、掃除するから絶対三十日には帰らなきゃいけないんだってパパとママには突っぱねられた。マジめんどくせ。
 まあそれで、渋々三十日には家に帰って、掃除を手伝ったんだけどさ。

 幸いというべきか例年ほどは汚れてなくて、掃除は想定より早く終わったわけ。うん、まあそれは良かったと思うんだ。
 だからあたしと妹の美音(みおん)は三十一日には家の近くで遊んでた。あ、もちろんあたしの名前も妹の名前も偽名です。ネットで本名出すとか馬鹿のやることだしね。
 小さな村って言ったけど、実は広さはそこそこなわけ。周囲を山に囲まれてて、川があって、田んぼがずーっと広がってる感じ。小さいって言ってるのは、住んでる人が少ないって意味。正月前後は里帰りで人が増えるけど、普段は千人にも満たない人しか住んでないんだってさ。
 加美町村は、大体四つのエリアに分かれてる。東西南北で、なんとなーくだけど。
 ど真ん中にあるのが臣島(おみしま)さんていうでっかい家。武家屋敷のちょーでかいやつみたいなのが建ってる。あの日本家屋っぽい見た目で四階建てなのはだいぶ意味がわからん。元々は民宿だった名残だとか言ってたっけ?
 うちの家は北側エリアにあって(東エリアとの境に近いとこだから、正確には中心から見て北東のあたりかな?)、今はばーちゃんとじーちゃんしか住んでない小さな家なんだけど。近くには、ボロボロの廃墟が建ってたりする。その家は元々『印ヶ崎』ていうすごい家だったんだって。印ヶ崎と書いて、いんがさきと読む。元々加美町村は、臣島家と印ヶ崎家の二つが強い力を持っていて、その二つの家が中心になって村を守ってたって聞いてる。残念ながら印ヶ崎家は戦後すぐに滅んじゃったって話だけど。
 その廃墟はボロくて危ないから入るなって言われてる。でも、村に住んでる従弟によると、あれオバケが出るからみたい。元々神主さんの家だった臣島家と、それに仕えて支える関係だった印ヶ崎家。その印ヶ崎家がなんかいわくありげな滅び方をして、だから縁起が悪いってことになっちゃったみたい。土地を継ぐ人もいなくて、つか家の解体工事とかしようとすると事故が起きるとかいう話もあって結局そのまんまになってるんだってさ。なんにせよ、あたしはオバケとかあんま好きじゃないし、近づきたいとも思わないんだけど。

 まあそんなことはいいや。
 あたしは小学生の妹の美音を連れて、中央エリア付近で遊んでたわけ。どういうことかわかんないんだけど、うちの村付近って冬でもそんなに寒くないんだよね。温かい空気が村の周辺に溜まってくるとか、そういうかんじ。
 さすがに川に入ったら寒いし、泳ぐことはできないんだけど、川の石を拾ったり投げたりして遊ぶことはできる。
 だからあたしと美音はいつものように石投げをしたり、綺麗な石を探してみせっこしたりして遊んでた。中学生なのに子どもっぽいとは思うんだけど、それでも都会の町にはないものっていつも新鮮というか。ちょっとしたものでも珍しく感じて遊びたくなる、みたいなのはあるんだよね。
 何より美音が楽しそうなら、付き合わないテはないじゃん?
 それでしばらく二人で遊んでたんだけど、そこに声をかけてくる人がいたわけです。

「ねえ、まぜて。いっしょにあそびたい!」

 舌ったらずな声で訊いてきた女の子は、多分小学一年生だったと思う。おかっぱ頭で、紺色の着物を着てた。なかなか可愛い子だけど、ちょっと着てるものとか髪型がレトロっぽいかんじ。

「ゆめこもあそびたい。ゆめこもなかまにいれて!」
「お姉ちゃん、わたし、この子もいっしょに遊んだら楽しいと思う!」
「ん、まあいいけど。石拾いくらいしかやることないけどいいの?」
「いいの!ゆめこ、ともだちとあそんだことないから、あそびたい!」

 多分、この村の近所の子なんだろうなとか。あるいは里帰りしてきた人が連れてきた子なんだろうなとか、そういう風にしか思わなかったかな。
 その子の名前は、『ゆめこちゃん』。苗字は聞かなかったからわかんない。
 あたし達はそれぞれ指定した石を拾ってくるという遊びをずっとしてた。例えば一番白い石!とか一番黒い石!とか一番綺麗な石を見つけた人が優勝!みたいな?加美町川の河原って綺麗な石が多くて、昔から子供達に人気の遊びスポットだったんだよね。
 とはいえ、そもそも遊び始めたのが午後からだったから、夕方まではそう時間もない。あっという間に日暮れになっちゃって、帰る時間になってしまった。ゆめこちゃんはだいぶ寂しそうにしてたけど、ゆめこちゃんに年が近いうちの妹を遅い時間まで連れまわしてたらあたしが叱られちゃうし。ゆめこちゃんも完全に暗くなるまえに家に帰りなって、そう言っておいた。

「また、ゆめこと遊んでくれる?」
「うん、またね」

 あたしはそう言って彼女と別れた。言ってから、そもそもあたし達三が日が終わったら家に帰っちゃうんだよなあ、って気づいた。嘘をついたわけじゃないけど、残り三日の間にもう一度彼女と会える保証もない。だってどこに住んでるのかもわかんないし。ちょっと申し訳ないことしたなーって思った。
 でさ。夕食の時にね、その話をなんとなーくおばーちゃんたちにしたわけ。パパとママは「どこの子だろうねー」って呑気に言ってたけど、それを聞いた時のおじーちゃんおばーちゃんの顔がなんか怖かった。血相を変える、っていうの?食事も放り出していきなり立ち上がると、どっかに電話をかけ始めたんだよね。
 すると、ばーちゃんに呼び出されたっぽい一人のおじいさんが来て、あたし達に声かけてくんの。なんでも、あの武家屋敷っぽい……臣島さんって家の人らしい。臣島さんって呼んでたから間違いないと思う。
 あたしと妹に、ゆめこちゃん、がどんな子だったのかすっごくしつこく訊いてきてさ。

「それで、その子といつ遊ぶという具体的な約束はしたのか?」
「してないよ。また遊んでって言われただけだし」
「……そうか。いやしかし、また遊んでくれとなると……ううむ。まずいな。興味を持たせてしもたんやな……」

 おじいさんはぶつぶつと呟いてた。で、あたし達に言ってきたわけ。

「次にゆめこちゃんに会ったら無視せえ。ええな?」

 今日はまだ、ゆめこちゃんは見てない。でも、無視しろってなかなか酷くない?しかも、せっかく美味しい御飯食べてたのにさ、その話があってからまた親戚がバタバタし始めて、ゆっくり御飯食べさせてもらえなくなるし。つか、お清めとか言われてすっげー冷たい水かけられたし、ほんとサイアクだった!
 なんなのアレ?なんかの儀式?幼女と遊んだら罪ってか、意味不明!