莎菜が一緒だと訪ね辛い。だから今日は、ある意味都合がよかった。
まだ完全に日が落ちていない時刻。神社の入り口に着き、自転車を下りる。
人里から離れた林の中。しんと静まり返る空気は、どこか怖さすら感じた。
狛犬の横を抜け、大小様々な大きさの石で作られた階段を登る。苔が生え、風化した面持ちは風情があるが、雨が降れば滑りやすく、段の幅が狭い為、足を踏み外しやすい危なさがあった。
夕方になり幾分涼しかったが、長い長い石階段を上り切ると、汗がじんわりと浮かび上がっていた。それを拭って、大きな鳥居の手前で頭を下げた。
失礼しますと心の中で呟いて、鳥居を潜る。
左側に手水舎があり、奥に拝殿と本殿がある。後は社務所兼自宅があるだけのシンプルな境内だが、正面、目の前の参道の途中、何かを燃やした跡があった。
真っ黒な炭になった物が、辛うじて木だと分かる。だがそれが護摩だきをした跡だとは分からなかった。
土が燃えて黒くなっているのを横目に、拝殿の方へ進む。鳥居からそこまではそう距離はなく、木々に囲まれる境内に、歴史ある古びた建物が見えてきた。
しめ縄の下、賽銭箱と本坪鈴があり、その背後に短い階段があって、拝殿の中に入ることが出来る。
夜にはもちろん閉まっているが、昼は開放されていて、拝殿の廻縁に人の姿があった。
ひとりは袈裟姿から阿切さんだと分かる。その阿切さんの隣、廻縁に座っているふたりは、遠くからでは分からなかった。
拝殿に近付いていって、阿切さんが俺の存在に気付く。おや? と言う顔をしてから、やぁと手が挙げられた。
それに対してぺこりと頭を下げる。そうしてふたりがこちらに視線を向け――参拝に来ていたのが、北村さんところのじいちゃんとばあちゃんだと分かった。
「おんや、真次んとこの、息子やないか」
真次と言うのは、俺の父親の名前だ。
「こんにちは。じいちゃんとばあちゃんは、お参りに来てたんですか?」
賽銭箱の前までやって来て、そこで話をする。ふたりは農作業の途中で来たのか。腕カバーを着けたまま、麦わら帽子、つばの大きい帽子を被った格好をしていた。
「畑仕事終わってからなぁ。二王頭さんに見てもらいにぃ来てたんやぁ」
「そうだったんですね」
北村のじいちゃんは特に訛りが強い。半分程頭の中で補完しながら答える。
「柊雨君がここに来るなんて、珍しいやん。神様にお願い事でもしに来たん?」
「いえ、阿切さんに用があって……。あ、でも俺は後からで大丈夫です」
そう答えると、阿切さんがにこりと微笑む。
「ほんなら悪いけど、ちょっと待っといてや」
まだ完全に日が落ちていない時刻。神社の入り口に着き、自転車を下りる。
人里から離れた林の中。しんと静まり返る空気は、どこか怖さすら感じた。
狛犬の横を抜け、大小様々な大きさの石で作られた階段を登る。苔が生え、風化した面持ちは風情があるが、雨が降れば滑りやすく、段の幅が狭い為、足を踏み外しやすい危なさがあった。
夕方になり幾分涼しかったが、長い長い石階段を上り切ると、汗がじんわりと浮かび上がっていた。それを拭って、大きな鳥居の手前で頭を下げた。
失礼しますと心の中で呟いて、鳥居を潜る。
左側に手水舎があり、奥に拝殿と本殿がある。後は社務所兼自宅があるだけのシンプルな境内だが、正面、目の前の参道の途中、何かを燃やした跡があった。
真っ黒な炭になった物が、辛うじて木だと分かる。だがそれが護摩だきをした跡だとは分からなかった。
土が燃えて黒くなっているのを横目に、拝殿の方へ進む。鳥居からそこまではそう距離はなく、木々に囲まれる境内に、歴史ある古びた建物が見えてきた。
しめ縄の下、賽銭箱と本坪鈴があり、その背後に短い階段があって、拝殿の中に入ることが出来る。
夜にはもちろん閉まっているが、昼は開放されていて、拝殿の廻縁に人の姿があった。
ひとりは袈裟姿から阿切さんだと分かる。その阿切さんの隣、廻縁に座っているふたりは、遠くからでは分からなかった。
拝殿に近付いていって、阿切さんが俺の存在に気付く。おや? と言う顔をしてから、やぁと手が挙げられた。
それに対してぺこりと頭を下げる。そうしてふたりがこちらに視線を向け――参拝に来ていたのが、北村さんところのじいちゃんとばあちゃんだと分かった。
「おんや、真次んとこの、息子やないか」
真次と言うのは、俺の父親の名前だ。
「こんにちは。じいちゃんとばあちゃんは、お参りに来てたんですか?」
賽銭箱の前までやって来て、そこで話をする。ふたりは農作業の途中で来たのか。腕カバーを着けたまま、麦わら帽子、つばの大きい帽子を被った格好をしていた。
「畑仕事終わってからなぁ。二王頭さんに見てもらいにぃ来てたんやぁ」
「そうだったんですね」
北村のじいちゃんは特に訛りが強い。半分程頭の中で補完しながら答える。
「柊雨君がここに来るなんて、珍しいやん。神様にお願い事でもしに来たん?」
「いえ、阿切さんに用があって……。あ、でも俺は後からで大丈夫です」
そう答えると、阿切さんがにこりと微笑む。
「ほんなら悪いけど、ちょっと待っといてや」

