コトリカゴ

 莎菜の家の庭に着き、カゴから荷物を取る。

「柊雨君、今日もありがとうね」

「ううん」

 いつもお礼を伝えてくれるが、これは俺がしたくてしていること。だからお礼はいいよと言ったこともあるが、それでも莎菜は毎回お礼を言ってくれる。

「じゃあまた明日。病み上がりだし、今日はゆっくり休むんだよ」

「あはは。また保護者になってる」

 可笑しく笑う彼女に一歩近付き、むっとした表情をしてみる。

「朝も言ったけど、俺は――」

「それだけ心配してるってこと」

 俺の言葉と莎菜の言葉が重なって、ふふと莎菜が笑った。

「ありがとう。でも今日は本当に大丈夫だよ」

「うん。分かった」

 微笑み合って、お互いの額をこつんと当てる。至近距離でまた笑い合って、離れた。

「じゃあ」

「うん。バイバイ」

 今日は家にお邪魔することもなく、しばらく庭先で話をするでもなく、早めに別れる。
 バイバイと手を振ってくれる莎菜に手を挙げて、自転車を漕ぎ出した。


 このまま家に帰れば、いつもよりかは早く着く。
 けれど帰らず俺が向かった先は、神社だった。

 どうしても――知りたかった。
 いや、知っておきたかった。

 昨日横井の息子さんから話は聞いたが、分からない点も多かった。

 この村を災いから救ったのに何故、”奇病“
が発症するのか?
 その奇病はどうしてこの村だけで、村以外には知られていないのか?

 そもそもこの奇病は何で、どうして阿切さんは祓うことが出来るのか――?

 この徳里村の、昔からある言い伝えを。
 奇病、病気のことを。

 にわかに信じられない話ではあるけど、これが本当で、今もこの村に起こっていることなら、原因や対処法なんかを知っておく必要があると思った。

 俺は――目撃者だから。
 あの時あの場にいて、実際に見た。
 あの日からずっと、頭の中に引っ掛かっていてもやもやしていた。

 少なからず部外者ではないし、何より知らないまま分からないままでいるのは、怖いと思った。


 その昔。この村を救った僧侶の血筋、二王頭家――。

 そして現、二王頭神社の当主である阿切さんに、会いに向かった。