コトリカゴ

「おーい、智喜」

 寝ている智喜の肩をゆらゆらと揺らす。すると顔を上げた顔は本気で寝ていたらしく、ふわぁーと大きなあくびをした。

「あー……。もうそんな時間?」

「何で俺の席で寝てるんだよ?」

 苦笑混じりに訊ねると、ぼんやりしながらも席を立ってくれる。でも相当眠そうで。まだ誰も座っていない、俺の前の席に座った。

「柊雨が来たら目覚ましになるだろ?」

「そこにいたら俺が起こすからな」

「だからだよ」

 そう言いながらも智喜は、何度もあくびを噛み殺す。

「昨日の夜、格ゲーでもしてたのか?」

 そんな訳がない知りながらも言ってみると、ちげーわとすぐ否定される。

「朝練がある日はしねーよ。起きれなくなるし。いやさ、昨日寝れなくて……。柊雨んとこは聞こえてた?」

「聞こえていた?」

 よく意味が分からず、ん? と首を傾げる。

「夜中にさ、何かの動物が叫んでて。それがうるさいし、気になるしで、結局寝れんかったのよね」

「いや、俺の家はそんなの聞こえなかったな」

「じゃあ俺んとこで鳴いてたんだな」

 最悪と言って項垂れるように、額を机に埋める。朝早くに起きて学校に来る智喜からすれば、かなり辛いだろう。

「マジで、午前の授業起きてれる自信ない」

「ノートは見せるよ」

「頼んだ」

 机に頭を置いたままの智喜が言うと、チャイムが鳴った。

「じゃあな~」

 椅子から立ち上がり、ふらふらと歩き出す。智喜は自分の席に戻るや否や、すぐに寝の体勢についた。

 大丈夫か……?

 様子を見守っていた俺は、ひとり苦笑いを浮かべる。それからゆっくりと、昨日の夜のことを思い返してみた。

 動物の叫び声、か。

 記憶を辿ってみても、聞こえた覚えはない。
 夜中に起きることなく、朝のアラームで起きたので、何か気になることはなかったと思う。

 俺は結構敏感な方で、ちょっとした地震や雷の音で目が覚めたりするから。
 だから動物が騒いでいたのは、智喜の家の周辺だけ。と言うこと。

 答えに辿り着いた俺は災難な彼の為に、今日はしっかりノートを取ろうと思った。