コトリカゴ

「じゃあまた終わりに。無理はしないようにね」

 莎菜のクラスの前。別れる前に彼女の体調を気遣う。

 翌日の今日。莎菜の喘息も治まり、ふたりで登校してきた。でも病み上がりであること。これまでの傾向から、無理をするとぶり返してしまうことを知っているので、念を押して言う。

 廊下には同じように登校してきた生徒や、話をしている生徒がいて、周囲はがやがやと騒がしい。
 そんな中で過保護発言をした俺に、莎菜があははと笑った。

「柊雨君って喘息のことになると、保護者目線になるよね」

「それだけ心配してるってこと」

「そうだね。ありがとう。でも無理はしないから、大丈夫」

「うん」

 莎菜の言葉を信じるとして、持っていた手提げ鞄を渡した。

「ありがとう。重くなかった?」

「いや、これくらい何ともないよ」

 あっさりと答えると、男の子だねーと言うので、何だそれ? と笑ってしまう。それに釣られて莎菜も笑うと、視界の端でこっちを見ている視線に気付いた。

「今日は来てると思ったら。朝からラブラブなところを見せてくれるねぇ」

 ちらとそちらを見ると、教室の扉からこちらを覗くふたりの生徒。莎菜の友達に、俺はぺこと頭を下げた。

「わっ。しーちゃんに、あゆちゃん」

 まさか、こっそり見られていたとは思っていなかった莎菜が、驚いて友達の名前を呼ぶ。

「見てないで、いたなら声掛けてよー!」

「ふたりの邪魔は出来ないでしょ~」

 と言うわりにはにやにや笑っていて、ふたりが楽しんでいたのが分かる。俺は何とも思わないが、莎菜はこう言うのを恥ずかしがるので、顔を真っ赤にさせて友達の背中をぐいぐいと教室の中に押した。

「柊雨君、それじゃあ」

「うん」

 笑って手を振り、しばらく様子を伺う。仲良さそうな光景にふっと笑みが零れ、それから自分の教室へと向かった。


 確かショートの子がしーちゃんで。
 いつも髪の毛を括ってる子が、あゆちゃんだったな。

 クラスが違うので苗字は知らない。莎菜から聞いた情報を思い出しながら、3組の中に入った。

 いつも朝練が終わった智喜の方が先に教室にいて、誰かしらと喋っていることが多い。
 しかし今日は珍しく席に着いていて、机の上に顔を突っ伏して寝ていた。

 何故か俺の席で。